三越銀座店、鳴り物入り免税店の悲しい現状

“爆買いバブル”の減速が、いよいよ深刻化している。

 10月1日から始まった、中国の国慶節に絡んだ大型連休。今年も多くの中国人が日本へ向けて旅立った。訪日観光客に人気の銀座も、この連休中は多くの観光バスや、キャリーケースを引く観光客が溢れた。

その一方、三越銀座店の空港型免税店「Japan Duty Free GINZA」は、あまりにも閑散としていた。空港型免税店とは、消費税だけでなく関税や酒税、たばこ税まで免除される免税店。今年1月末に、沖縄県を除く初の店舗として銀座店の8階にオープンした店舗だ。ところが、今や高級ブティックには文字通り人っ子1人おらず、中国人女性に人気の美容家電を販売する特設コーナーでは、商品を手に持った女性販売員が所在なさげに立ち尽くしている。高級感溢れるお酒とタバコの売り場には、1月下旬の開店当初はなかった「じゃがポックル」や「キットカット」などのお菓子が、うず高く積まれていた。

■初年度売り上げは目標の半分未満

 同店の業績は、開業当初から低空飛行を続けている。三越銀座店の免税店を運営する合弁会社の筆頭株主、日本空港ビルデングの発表によると、2〜4月の売上高は、当初計画の35%程度と大幅に未達。直近の7、8月でも大きな改善は見られない。初年度の目標売上高を130億円と掲げていたが、その半分にも到達しない可能性は濃厚だ。

 そもそも、百貨店における免税売上高は、今年4月から直近の8月まで5カ月連続の前年割れが続いている。日本百貨店協会の発表によれば、8月の免税売上高は、前年同月と比べて73%。購買客数は依然として増えているものの、円高の進行や中国政府による関税引き上げの影響をもろに受けて、高級時計や高級ブティックの商品の売れ行きが著しく鈍っているのだ。

 底堅いのは、化粧品やお菓子などの単価が低い商品ばかり。さらに、本国に持ち帰って転売行為をするブローカーによる購入も、「4月以降は目に見えて減ってきた」(三越銀座店の宝飾売り場の販売員)。その結果、百貨店全体で免税品の購買単価は3割程度落ちこんでいる。

 さらに、観光客たちが空港型免税店での買い物に魅力を感じていないという現状もある。「Japan Duty Free GINZA」の場合、店舗の8階という立地の悪さに加え、日本にやってくる中国人が多く利用する関西国際空港や茨城などの地方空港では、買った商品を受け取れないという点がネックとなっている。

日本人客にアプローチ?

 接客面での不満もある。年に数回日本を観光するというある20代の中国人女性はこう語る。「せっかく日本に来たのに、免税店にいるのは中国人の店員ばかり。接客のレベルも日本人に比べると低く、雑な扱いを受けたことがある」「地方の小さなお土産屋さんで、中国語の通じない店員さんと話した方がずっと楽しい」。三越銀座店を含め、都心の大型百貨店では訪日客への対応策として、外国語を話せるスタッフの雇用を増やしているが、良かれと思ってしたことが、かえって裏目に出てしまっているのだ。

 こうした状況を受けて、店舗側も手を打っていないわけではない。「中国現地の代理店にアプローチしたり、売れ筋のお菓子を新たに導入したりしている」(日本空港ビルデング)。

 加えて、目立ったのは日本語の看板だ。「どなたでもご自由にご覧いただけます」――。銀座通り沿いの入り口に掲げられた免税店の広告には、大きな文字で日本語が書かれていた。

 実は、空港型免税店は出国1カ月以内の日本人も利用が可能で、当初計画では4割程度を占めると予想していた。しかし実際は、1割ほどと想定以上に利用者が少なかった。そこで、「日本人にもっと知って欲しい」と、周知を強化しているという。とはいえ、これから出国しようとする日本人にとって、免税店での買い物を空港で荷物として受け取ることがどれだけ魅力があるについては疑問が残る。

■2店目を新宿にオープンか

 こうした厳しい状況にも関わらず、会社側は当初から構想していた2店目の出店を諦めていない。今年1月の銀座店開店当初は、「今年度中に伊勢丹新宿店の周辺に2店目を開業したい」(三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長)と発表していたものの、「今年度に出店するという動きは把握していない」(三越伊勢丹)、と一時はトーンダウン。

 やはり取りやめたのかと思いきや、「来年の4月中には新宿店近くの「パークシティ」(駐車場などがある施設)に免税店を開業する予定だと聞いている」(百貨店業界関係者)ともっぱらのうわさなのだ。

 小売店に詳しいフロンティア・マネジメント代表の松岡真宏氏は、百貨店が訪日客のモノ消費に依存しすぎていることに警鐘を鳴らず。「百貨店での爆買いは終了したといわれているが、むしろこれからが勝負だ。日本人よりも速いスピードで、中国人はモノからコト消費へ移っていく。百貨店は、外商事業などの中で、良い旅行先や旅館を沢山知っているのだから、それを活用しない手はない。日本の人口が減っていく中で、もう終わったものにせずにしっかりとした市場に育てていかなくてはいけない」(松岡氏)。

 現在、日本を訪れる訪日観光客の数は増加し続けている。直近の8月でも、前年同期比を13%も上回る204万人がやってきた。百貨店の国内消費が低迷する今こそ、かれらの購買力を百貨店が取り込むための方策を、今一度抜本的に考え直す時期に来ている。