郵政の成長戦略道半ば 上場1年…マイナス金利で株価低迷

新社長就任7カ月「次の一手へ準備」

 日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険のグループ3社が東京証券取引所に上場して4日で1年を迎える。昭和62年のNTT以来の大型上場案件として華々しいスタートを切ったが、日銀の「マイナス金利政策」導入などを受け、株価は低迷。日本郵政の前社長が健康上の問題で退任し、予期せぬ経営刷新を迫られたこともあり、上場企業としての成長戦略はまだ描けていない。(高橋寛次)

昨年11月4日、3社の初値はいずれも上場前の公開価格を上回り、順調な滑り出しだった。しかし、その後の値動きはさえない。今月2日の終値を初値と比べると、下落率は日本郵政で約20%、ゆうちょ銀で約28%、かんぽ生命で約26%となっている。

 株価が下がったのは、2月導入のマイナス金利政策が、ゆうちょ銀とかんぽ生命の収益環境を直撃したからだ。ゆうちょ銀の運用資産約205兆円のうち、実に約79兆円が国債。同行の平成28年4〜6月期の経常利益は前年同期から2割近く減った。

 日本郵政グループも金利低下に手をこまねいていたわけではない。昨年6月には米証券大手ゴールドマン・サックス出身の佐護勝紀氏をゆうちょ銀副社長に迎え、外国債券や不動産投資信託(REIT)など、比較的リスクの高い資産に投資していく態勢を整えていた。しかし、マイナス金利による運用利回り低下は想定を超えた。運用資産が巨額だけに、リスク資産へのシフトも容易ではない。6月末の運用資産に占める国債の比率は38・8%で、3カ月前から1・3ポイント低下したにすぎない。

 「目玉となる施策がない」。ある自民党議員は、日本郵政グループの戦略に苦言を呈す。ファミリーマートやイオン、第一生命保険と協力関係を築くなど、新しいサービスを提供しようとする動きは出ている。だが、経営陣が模索する日本郵政によるM&A(企業の合併・買収)やゆうちょ銀による地銀との連携など、スケールの大きな戦略はまだ、描かれていない。

 同社グループをめぐっては、政府が日本郵政株の80%超、日本郵政が金融2社のそれぞれ89%を保有するという株主構成が特例で維持されている。株の売り出し時期が焦点だが、株価が低迷しているうちは実施しにくい。真の上場企業に脱皮するには、投資家に成長性を確信させる“次の一手”が必要といえる。

 3社を上場に導いた日本郵政の西室泰三社長(当時)が急遽(きゅうきょ)退任し、長門正貢氏が慌ただしくトップに就いてからまだ7カ月で、真価が問われるのはこれからだ。長門社長は「剣道と同じで構えが大事。次のステップに進むための準備をしてきた」と強調している。