カシオが「Gショック」の先に描く屋台骨

長年のウミを出し切り、新たな事業の柱を作ることができるか――。

 カシオ計算機は11月2日、2017年3月期の通期業績予想を大幅に引き下げることを発表。売上高は従来予想の3700億円から3300億円に、営業利益は480億円から305億円へと下方修正した。5年ぶりの減益となる見込みだ。

上期(4〜9月期)の実績も売上高1567億円(前年同期比約10%減)、営業利益135億円(同約37%減)と減収減益となったが、要因の大半は円高の進行だった。通期予想修正も円高が大きな要因の一つだ。

■Gショック好調の裏でリストラ

 為替を除くと主力事業は好調だ。看板商品「Gショック」など売上高の半分以上を占める腕時計の販売は、現地通貨ベースの金額では10%伸びた。訪日旅行客の需要が減速し他の日系時計メーカーが苦戦する中、海外でGショック人気が継続し気を吐いている。

 ただカシオとしてはいつまでも時計だけに頼らず、体質を強化したい。そこでメスを入れるのが、赤字が続くシステム部門だ。今期中にプリンター事業から撤退し、OA事業を縮小する。プリンター事業では企業向け製品を展開していたが、他メーカーとの競争激化で苦戦が続いていた。既存顧客に対する保守やサポートは当面続ける。

 OA事業はこれまで経営支援のITシステムを多業種に向けて展開してきたが、赤字部門から手を引く。今後はプロジェクターや伝票管理システムなど、成長の見込める分野に絞るという。プリンターとOA事業を足すと500名弱の人員がいるが、他部門への配置転換に加え、早期退職も視野に入れている。

リストラ後のカシオが狙うもの

 不採算事業から手を引き身軽になるカシオが取り組むのが、樫尾和雄会長の直轄で進む3つの新規事業だ。「新規事業では30%以上の利益率を出せるように発破を掛けている」と樫尾会長は鼻息が荒い。

 すでに事業化されているのが「リスト端末」。今年1月に発売したカシオとして初めてのスマートウォッチ「WSD-F10」が、その代表例だ。アウトドア用に特化し、Gショックで培った耐久性を売りにする。スマートフォンと連携し、登山用の地図や潮の満ち引きを知らせるアプリ、ランニング時に活動量を確認するアプリなどを搭載。トレッキングや釣りといった場面での使用を想定している。

■新規事業は会長直轄

 2つ目が量産手前の状態にあるという「2.5Dプリンタ」だ。2次元でも3次元でもない、「2.5次元」とは何なのか。特殊な素材を塗布した専用紙に印刷し、それを加熱することで平面に約2mmの凹凸をつけた立体的な表現を可能にするというものだ。製造業における試作での活用などを想定しており、すでに商談も立ち上がっているという。

 そして3つ目が、カシオの経営ノウハウをまとめ、ネット上の動画で配信するという「経営ネット事業」。今期中には始める予定で、全世界のビジネスパーソンを対象にする。まずは「商品企画」をテーマにした動画を制作する。「かつて電卓事業で他社に差をつけたカシオにはいい商品を生み出す力があり、そのノウハウへの関心がある人は多い」(樫尾会長)。

 樫尾和宏社長は「(これら新規事業を束ねたものを)時計事業、教育事業(関数電卓や電子ピアノ等)に次ぐ第3の柱にしていきたい」と話す。もっとも、すでに事業化されたのはリスト端末のみ。ほかの2つはまだ未知数だ。Gショックの発売から30年を超えているが、今度こそ新たな柱を打ち立てることができるだろうか。