米大統領選 トランプ氏が当選確実 予想覆し逆転

米大統領選は8日、投開票された。米メディアによると、政治経験のない共和党候補の実業家ドナルド・トランプ氏(70)が激戦州の中でも大票田の南部フロリダや中西部オハイオなど重要州を制した。勝利が確実視される残る州の選挙人を合わせると、当選に必要な過半数270人を超える見通しで、当選を確実にした。鍵を握る激戦州で敗戦した民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官(69)は、民主党地盤の東部や西部の諸州などを中心に確保したが、及ばなかった。AP通信はトランプ氏が当選したと速報。米CNNによると、クリントン氏はトランプ氏に電話し敗北を認めた。

米国で政治経験のない人物の大統領就任は、1953年の第二次大戦の連合国軍最高司令官だったアイゼンハワー氏(第34代大統領)以来。行政経験、軍歴もない大統領は1776年の建国以来初めて。

 トランプ氏は副大統領候補のマイク・ペンス・インディアナ州知事(57)と共に、2017年1月20日に就任する。トランプ氏は就任時は70歳7カ月で、81年1月に69歳11カ月で初就任したレーガン大統領(当時)を上回り、歴代で最高齢で就任する大統領になる。共和党は8年ぶりにホワイトハウスを奪還する。

 米メディアによると、トランプ氏は共和党の地盤である南部のケンタッキーやテネシー、西部ワイオミングなどの州で勝利を確実にした。激戦州ではオハイオ、フロリダ、ノースカロライナなどを得た。オハイオ州は「全米の縮図」と言われ、1964年以降の大統領選では、同州で勝った候補がいずれも最終的に当選した。

 一方、クリントン氏は東部の大票田ニューヨークやニュージャージー、中西部イリノイ、カリフォルニアなど民主党の地盤州を確保した。事前の選挙人獲得予想では優勢だったが、実戦でトランプ氏に逆転を許した。

 選挙戦では、トランプ氏は「アウトサイダー(よそ者)」であることを前面に掲げ、既存の政治体制を変えると主張。政治経験と実績を掲げたクリントン氏を「体制派」や「不正」の象徴と位置づけ、厳しく批判し続けた。

 また、「米国第一主義」を掲げ、自由貿易や同盟国との関係の見直しなど、これまでの共和党候補とは異なる主張を展開。メキシコ移民や女性、退役軍人などに対する暴言で批判は浴びたが、現状や「エスタブリッシュメント(支配階層)」への不満を募らせる白人男性らの熱狂的な支持を得た。

 度重なる暴言や過去の女性蔑視発言が暴露されるたびに支持率を大きく落とし、党主流派との対立を抱えたままの選挙戦となった。しかし、大手メディアを「最も不誠実だ」などと酷評しながらも、話題を振りまくことで逆に最大限利用した。大規模集会やソーシャルメディアも積極的に活用し、無党派層や政治に関心の低かった層を掘り起こすことにも成功した。

 米国初の女性大統領を目指したクリントン氏は08年大統領選の民主党候補指名争いで敗れ、今回は女性の社会進出を阻む「ガラスの天井」を打ち破ろうと呼びかけて本選に進んだが、再び敗退した。

 抜群の知名度と実績で、早い段階で「本命候補」と位置づけられたクリントン氏は、大統領夫人や上院議員、国務長官などを歴任した政治経験を前面に掲げ、「就任1日目」から仕事ができると主張。オバマ大統領の「後継」だと強調し、大統領夫妻やバイデン副大統領夫妻なども精力的に後押しした。

 しかし、約30年にわたり政界でスポットライトを浴び続けたことで、有権者の「飽き」を指摘する声が出ていた。さらに国務長官時代に私用メールを公務に使い機密保持で批判を浴びた問題にたびたび焦点があたって「何かを隠している」との疑念から信頼性が傷つき、敗戦につながった。