900円ニットで勝負、低価格追求のしまむら好調−デフレ心理背景

税込み900円。しまむらではランチ1回分でリブニット1枚、あるいはジョガーパンツ1枚が買える。ファーストリテイリングが展開している「ユニクロ」ブランドの似た商品が1490円や2990円などに設定されているのと比べても安い。さらにこちらには消費税分が上乗せされる。

創業から60年あまり、旗艦店を大都市の中心部にオープンさせたり、著名デザイナーを起用したりといったコストが掛かることはしない。2000店を超えるアパレルチェーンを展開しながらも、マーケティングなどの販売管理費が売り上げに占める割合は前期(2016年2月期)実績で24%。テニスの錦織圭選手を宣伝に起用しているFリテイリは39%に上る。

「ばくちみたいな勝負はしませんし、勝ち目があることしかやらない。分からないことはやらない」と野中正人社長が15日、ブルームバーグのインタビューに語った。「それをずっと会社の基本的な方針」にして、「結果としてリスク分散になっている」という。昨年の暖冬に続いて今年は記録的な数の台風上陸や残暑に見舞われながら、直近5四半期連続でFリテイリを上回る営業利益成長を実現させた。

デフレ心理の台頭、訪日外国人消費の鈍化と小売業界に逆風が吹く中で、国内アパレル2位のしまむらが好調だ。業界首位のFリテイリが客離れに手を打つため低価格へと軌道修正し、3位のワールドが約500店舗の閉鎖計画を発表するなど苦戦を強いられる中、ぶれずに低価格を追求し続ける戦略のしまむらは今期(17年2月期)に2期連続の増益と最高益更新を見込む。

自動化

製造はせず、一括して仕入れ、売り切ることでコストを抑えるのが特徴だ。全国で共通の商品を扱う中、店舗の場所や季節によって最適な店頭の品ぞろえを追求する。円安で仕入れコストが上がり2期連続の減益になったことを受け、14年12月から野中社長が「フルモデルチェンジ」と呼ぶIT活用の強化を行い、在庫管理や発注の自動化を進めた。店舗数の増加で事務対応に追われる社員に代わり、今では店舗間の商品移送指示の7−8割をコンピューターが出すという。

後は、値下げもコンピューターによって管理していく考えだ。IT化により全体の作業を計画しやすくなり、物流をより効率的に行えるという。

こうした戦略の背景にあるのは、将来のグループ店舗数拡大だ。現在の5割増の3000店を目標に、「しまむらプラス専門店」という形態の店を増やしている。しまむらは雑貨、靴などの専門店も展開しており、これらをしまむら店舗の隣に併設する。野中社長によると、中でもベビー・子供服店の「バースデイ」が「一番うまくいっている」という。少子化に伴ってベビー服需要が減る中で、供給も減り、ベビー服が必要な客にとっては不便になったという読みが当たった。

M&A

野中社長は、専門店の種類を増やすために合併・買収(M&A)の活用も検討していると明らかにした。資金力は十分だとしたものの、具体的な案件や進行状況については回答を控えた。

21日午前の取引で同社株は一時、前週末終値比1.5%高まで買われた。Fリテイリは一時、同1.7%安となった。TOPIXは同0.9%高まで上げた後、同0.8%高で午前の取引を終えた。

しまむらには、さらに拡大のチャンスがあるとの見方もある。JPモルガン証券の村田大郎アナリストは、都市部で総合スーパーが競争激化で閉店しており、そうした空き店舗に進出することで、郊外のシェアが高いしまむらは「都市部では伸ばせる」と指摘する。

お台場にも進出

前身の島村呉服店が1953年に埼玉県の小川町で営業していたところを株式会社として設立。61年に店舗数が6店の当時から「セントラルバイイング制」と呼ばれる一括買い取り制度を導入し、売れ残っても仕入れ先には返品しないという方法で、仕入価格の低減に努めた。創業初期から郊外を中心に店を展開していたが、現在は都内で高田馬場やお台場などにも出店している。

海外も台湾(42店舗)と上海(4店舗)およびその周辺(8店舗)に進出したが、売り上げ全体に占める比率は前期実績で1%にとどまる。特に本土で苦戦していると野中社長はいう。「上海市内はいいんだけど、その外周、2級・3級都市までチャレンジで行ったら、想像を絶する売れなさ」だと話す。店舗ごとの赤字幅や撤退費用を見極め、出退店を決め、店舗数は「2桁くらいは維持」すると述べた。

「笑いが止まらない」

店舗は「ヤング型」や「ミセス型」などに分類され、後者の店頭には「おばあちゃんが着ている紫っぽい、ちょっと派手なゆったりとした」服を並べ、近くには肌着を配置する、と野中社長は説明する。お年寄りはアウターと一緒に肌着も購入する傾向があるのだという。

下半期(16年9月−17年2月)に入り、9月以降の残暑でしまむらは既存店売り上げが2カ月連続で前年割れとなる厳しい状況だった。しかし、気温が下がってから反転。今では「本当に笑いが止まらないくらい売れている」と野中社長は話す。今期には前期比16%営業増益の462億円を目指している。気象庁の12月からの3カ月予報によると、西日本では平年より低め、関東甲信や東海、北陸では平年並み、東北や北海道では高めの平均気温が予想されている。

M&Aについての社長発言など第8段落以降を追加しました.