トヨタや日産でも無理?若者向けに安くて楽しいクルマは作れないのか

先日、自動運転や人工知能など、次世代自動車に関する国際カンファレンスで興味深いプレゼンを聞いた。

それは、駐車場『タイムス』の管理運営者である、パーク24グループの「カーシェアリングの利用動向から探るモビリティニーズの可能性」というものだ。同社は現在、全国に約1万6000台のカーシェアリング用車両を持ち、会員数は70万人を超えている。

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そのプレゼンのなかで、利用者の年齢分布では、20代が全体の21%、30代が31%、40代が28%と続く。これらは、日本の人口比率で見た場合では、それぞれ約2倍にあたる。

次に、新規会員の増加状況を紹介した。ここでは、2012年11月を100とし、2015年7月までを見ると、全体としては約2倍になっているのに対して、18〜24歳では約3.5倍と大きく伸びている。こうした伸びの傾向は、2016年以降に入っても変わらないという。

また、一人あたりの月額利用料金と走行距離の年代別で見ると20代が最も多く、月額で約7000円、距離では約50kmに達する。

そのほか、利用料金の高い、プレミアムクラス(上級国産車や輸入車)の利用でも、20代が最も多いというのだ。

こうしたデータから、パーク24グループでは、次のような仮説を立てている。

【現在よくいわれる“若者のクルマ離れ”は、“若者のクルマ購入離れ”である】と。

パーク24グループのデータが物語るのは、やはり所有から共有という社会全体の大きな変化だ。

人生のなかで、人が購入する金額が大きな買い物は、第一位が住宅、第二位がクルマである。1960年代の高度経済成長期の頃から長きに渡って、ずっとそう言われてきた。

しかし、住宅についても、大手デベロッパーのデータによると、都心から離れた郊外の一戸建てから、都心の中古物件をリースして内装をリノベーションする傾向が強まっている。若者の低収入化が進むなか、高度経済成長期と比べて驚異的に高額となった郊外の地価は将来も急激に下がらない。

また、都心と郊外を結ぶ電車網が整備されたことは、朝晩のラッシュを増加させており、<部屋が狭くても良いので、都心に住んで通勤を楽にしたい>と思う人が増えるのは当然だ。

こうして、人口が集中する都市部と都市部周辺で、住環境が変化したことが、若者のみならず庶民のクルマ購入に対する意識の変化をもたらした。ちなみに、東急電鉄のデータによると、同社が首都圏郊外に所有するマンションの全4624戸のうち、駐車場の稼動率は64.3%に留まっており、各所で駐車スペースの空きが目立つ状況だ。

こうした都市部と都市周辺での状況と、地方の状況は当然違う。地方都市は、公共交通機関が都市部のみに集中しているため、都市部と郊外は自家用車が必要。また、高齢化が加速している中山間地域では、クルマは「生きていくための足」だ。

このように、日本全国では、様々な社会変化が起こっているなか、“若者が買いたい”と思えるクルマは今後、出てくるのか?そのためには、自動車メーカー自身が、社会の変化を強く意識することが第一だ。

例えば、トヨタの場合、高度経済成長期にキャッチコピー、『いつかはクラウン』を大々的に訴求した。若者はクラウンという到達点を目指して、エントリーモデルのカローラを買った。その後、コロナ、カリーナ、マークIIと、クラウンへ到達するための階段を、年齢を重ねて収入が伸びるに従って、徐々に登っていった。

また、そうした王道の階段とは別に、若者は走りの楽しみや、所有することの優越感や満足感を得るために、セリカなどのスポーツカーを買った。さらには、ハイソ(サイティ)カーと呼ばれたソアラに憧れた。

こうした旧態依然とした製品企画は、現在でも、またこれから先も通用しないことは、トヨタ自身も十分に承知している。現在では、ミニバンと軽自動車という<生活利便性を最重視>が、若者層を含め全世代に対するクルマの訴求方法になっている。

庶民とクルマの関係が大きく変化するなか、若者の心に強く突き刺さるクルマを作るのは、本当に難しい時代だ。

自動車メーカーとして、その答えを見つけたメーカーはない。

ビックデータ化、自動運転化、人工知能化、そして所有から共有。巨大な技術変革、そしてサービスの変革が起こるなかで、若者が購入したいと思えるクルマの形は、まだ見えてこない。