小学校分校60年で4600校が166校に激減 兵庫では1校だけに

通学が難しい山間部などのへき地に設けられた分校が、道路交通網の発達や少子化などの影響で姿を消しつつある。60年前は全国に4600校以上あった小学校の分校は、2016年春には166校に。兵庫県内では今年、朝来市の2校が廃止となり、残るは香美町の1校になった。

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香美町香住区余部(あまるべ)、海沿いの山中に余部小学校御崎(みさき)分校がある。地元の集落は17戸。現在、在籍しているのは3年の岡田若菜さん(9)1人だけで、週の大半は担任の中村仁美教諭と2人で過ごす。

 集落のある御崎地区から麓の本校までは約4キロの細い山道で、子どもの足では厳しい。このため1915(大正4)年に同分校が開校。集落の子どもは3年までは分校、4年からは本校に通う。

 「御崎では分校に行かせるのが当たり前。自分もたくさんの思い出がある」と若菜さんの父で同分校出身の良さん(35)。今春本校から赴任した中村教諭も「教え子と1対1。教育の究極の姿です」と充実感をにじませる。

 一方、当の若菜さんは「1人はさみしい。早く本校に行きたい」と複雑な表情。母の和代さん(34)や祖父母も「先生に手厚く見ていただいてありがたいが、さすがに1人はかわいそう。今は本校までバスもあるし…」と、分校に対する思いには家族間でも温度差がある。

 深刻な少子高齢化が進む同町は2年前、当面は分校を含む小規模校を統廃合しない方針を打ち出した。来春から若菜さんは本校に通うが、同分校には妹の真菜ちゃん(6)が入学する。集落には真菜ちゃんの1学年下にも子どもが1人いるといい、同分校は少なくとも4年先までは存続する見通しだ。

文科省によると、小学校の分校は1955(昭和30)年には全国に4653校あったが、その後は急速に減り続け、今は166校。都道府県別で最多の和歌山県には11校があるが、同県教委によると7校は休校中といい、実際に児童がいる分校は166校よりかなり少ないとみられる。

 朝来市教委によると、今春廃止された同市の2校(糸井小学校朝日分校、竹田小学校藤和分校)は、10年以上前から休校していたという。