京都で開業ラッシュ、「高級ホテル戦争」勃発

11月29日、「フォーシーズンズホテル京都」で開業を記念したセレモニーが開かれた。

祝いの場に駆け付けた門川大作・京都市長は不動産とホテルを所有するマレーシアのベルジャヤ・コーポレーションの創業者ヴィンセント・タン氏に対して「質の高いホテルを(もう一つ)頼みます」と言い、大勢の招待客の前で「違法な民泊には毅然と対応していく」と宣言した。

 今、京都がホテルの開業ラッシュに沸いている。訪日外国人観光客の増加を背景に、年間観光客数は5000万人を突破。米旅行雑誌『トラベル+レジャー』で2014年、2015年と2年連続で世界で最も魅力的な都市に選ばれたことも追い風となっている。

■外資系高級ホテルが次々開業

 フォーシーズンズが、日本で直接運営するのは2002年に開業した東京・丸の内に続き、2軒目となる。ベルジャヤが土地・建物を所有し、フォーシーズンズが運営を担当する。祇園や清水寺などがある東山区にあり、2万平方メートルの敷地には123の客室と分譲型のレジデンス57室のほか、12世紀に造園された積翠園(じゃくすいえん)を備える。

 総支配人のアレックス・ポーティアス氏は「京都は歴史、文化を持ちながら、現代感覚にあふれ、食のレベルも高い。世界で誰もが行きたい街だ。ホテルが不足しているため、勝算はある」と語る。

国内外のホテルが殺到

 この宿泊需要を狙って、ホテル運営会社が日系・外資系入り乱れて、高級ホテルの新規開業を積極化している。2014年には米マリオット系の「ザ・リッツ・カールトン京都」が、2015年には森トラストが運営する「翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都」が開業。米ホテル大手のハイアットは2019年、有名料亭「山荘京大和」の敷地内に70室程度の「パークハイアット京都」の開業を決めている。出遅れた米ヒルトンは「最適なビジネスパートナーなどの条件がそろえば、何としてでも進出したい」(日本事業を統括するティモシー・ソーパー氏)と野心を隠さない。

■大型の土地の争奪戦

 だが、京都は三方を山に囲まれ、土地が狭い。所有者が細かく分散しているほか、日本で最も厳しいとされる景観規制条例を敷いている。

 その結果起きているのが、大型の土地をめぐる熾烈な争奪戦だ。廃校になった清水小学校の跡地の活用法を京都市が昨年募集したところ、10社が殺到。最終的にはNTT都市開発が、建物を改装して40室程度のホテルへと転換する計画で契約を勝ち取った。現在は日本の映画発祥の地とされる立誠小学校跡地の活用法について計画を募集中。市は具体的に用途を決めてはいないが、「ホテルになるのではないか」(京都市職員)とうわさを呼んでいる。

 また藤田観光が運営し、2014年に営業を終了した名門「京都国際ホテル」の跡地は阪急不動産が取得し、マンションを建設する計画だったが、門川市長の強い要望で計画を撤回。三井不動産が取得交渉を進めており、ホテルとなる可能性が濃厚だ。

 10月に公表された「京都市宿泊施設拡充・誘致方針」によれば、早めに予約する訪日外国人観光客の増加で、日本人観光客や出張による宿泊が激減。政府が掲げる2020年に4000万人の訪日客を受け入れた場合、京都市では宿泊施設を現状より1万室増やす必要がある。現在、ホテルを中心に4000室の開発計画があるため、残り6000室を確保しなければならない状況だ。

賃貸マンションをホテルへ転換

 京都市は民泊について、無許可営業のうえに運営実態が不透明で周辺住民との軋轢を生み出しやすいとして、徹底的な取り締まりを実施。そのため、賃貸マンションや住宅をホテルやゲストハウスに転換する事例が急増している。

 京都市内で不動産活用コンサルティングをしているコミュニティ・ラボの田中和彦氏も、ある不動産オーナーの依頼を受けて、マンションとして造られた物件をコンドミニアムに転用。この物件は京都市の許認可が得られ次第、ホテルとして開業する方針だ。「賃貸マンションよりも、ホテルのほうが投資利回りが高い。市内ではこうした動きが出始めている」(田中氏)。

■「簡易宿所」が急増

 このような簡易宿所と呼ばれる施設の営業数は06年度には200軒程度だったが、15年度に696軒まで増加。今年4〜10月で1086軒に達しており、この1年でほぼ倍増する見通しだ。これに対して市は12月、周辺住民の生活環境との調和のため、迷惑行為の防止など宿泊施設に対する新たなルールを導入した。

 不動産助言大手のJLLでホテル事業を統括する沢柳知彦取締役は「京都は静かな街並みがウリだったのに、観光客が増えてテーマパーク化している。期待とのギャップが広がれば、リピート客数に影響が出かねない」と指摘する。

 実際、冒頭の旅行雑誌のランキングで16年に京都は6位に順位を落とした。その要因は円高に振れたことだけではないだろう。はたして熱狂はいつまで続くのか。