ローソンが今さらながら銀行に参入するワケ

コンビニエンスストア国内店舗数3位のローソンは11月下旬、銀行業参入に向けて準備会社を設立した。流通業による銀行業参入はセブン&アイ・ホールディングス、イオンに次いで3社目。金融庁の許認可取得を前提に、数年でサービスを開始する見通しだ。

「競合セブンと比較して、ATMという機能でわれわれは劣っていた。提携行の多さや利便性をイーブンにしなくてはいけない」。ローソンの玉塚元一会長は銀行業参入の理由を率直に語る。

■金融部門が着実に成長しているセブン&アイ

 セブン&アイにおいて金融部門は存在感を増している。同社傘下のセブン銀行の2015年度経常利益は371億円。一方、ローソンのATMを運営するローソン・エイティエム・ネットワークス(LANs)は同60億円、ファミリーマートのATMを管理するイーネットは同5.5億円にとどまる。

 セブン銀行は自前で銀行を運営している。ATM利用に応じて提携銀行から受け取る手数料収入の多くが自社の利益となり、提携行の拡大や、法人向け決済、海外送金、個人ローンなど独自サービスの展開も自らの判断で行える。

 これに対し、LANsはローソンと銀行42社による共同出資会社。手数料収入の利益貢献が限定的であるほか、ローソンが独自の判断で金融サービスを展開することはできない。こうした縛りをなくしたいというのが、ローソンが銀行業参入を決めた理由だ。

 銀行業参入には、2014年の新浪剛史氏(現サントリーホールディングス社長)から玉塚氏への社長交代が、大きな転機となった。

 「前任(新浪氏)のときは、セブンと同じことをやってもしょうがないと差別化の号令をかけていたが、それは競合に負けてもいいという甘えを生んでいた」(玉塚会長)

 差別化を標榜する新浪氏の時代には、セブンと同様に自前の銀行を持つ発想は出てこなかったというわけだ。玉塚会長は「差別化の前に、(セブンに)負けているところを認めて、劣後状態を解消する」という考えの下、銀行業参入に踏み切った。

解決すべき2つの課題

 舵を切ったローソンは、セブン追撃に向けて着々と準備している。

 準備会社には、三菱東京UFJ銀行が5%出資。さらに金融庁との今後のやり取りを見据え、財務省出身の岩下正氏を会長に、社長には新生銀行出身の山下雅史氏を据えた。この人事について、競合幹部は「新生銀行から社長を迎えて、三菱色を薄めた。ほかのメガバンクに配慮したのでは」と指摘する。

 9月には筆頭株主である三菱商事がローソンを子会社化すると発表した。17年初めにもTOB(株式公開買い付け)を実施する予定だが、金融業の免許取得に向けても、親会社が三菱商事という信用力は大きなメリットとなる。

■セブンが意識しているのはむしろファミマ? 

 だが、ローソンの銀行業参入には、いくつか課題もある。

 一つは地方銀行の説得だ。関東地区のある大手地銀幹部は「ローソン銀行の設立は大きな問題だ」と語る。懸念を抱く理由はこうだ。

 ローソンは現在、銀行免許を持っていないため、LANsの運営に当たって多くの地銀に協力を仰いでいる。

 地銀はATMの現金が足りなくなったら補給するなどの管理業務を請け負い、収入を得る。このほか、LANsと提携していない金融機関の利用者がATMを利用したときには、1回当たり数十円の手数料収入を得ている。

 ローソン銀行が設立されると、いずれこうした協力関係は解消されると予想される。そうなると、地銀はセブン銀行に対するのと同様に、ローソンに一方的に手数料を支払うことになる。玉塚会長は「(地銀の)抵抗があるということは全然ない」というが、今後の交渉材料になってくるだろう。

 もう一つのハードルが、ローソン銀行として魅力のある独自サービスを展開できるかという点だ。

 現在、日販(1日当たり1店売上高)はセブンの約67万円に対し、ローソンは約55万円。一方、ATMの1日当たりの入出金回数はセブン銀行約100回に対し、LANsは約50回と日販以上に差が開く。

 セブン銀行は設立から15年という年月をかけ、利用者との信頼を構築してきた。ローソンが対抗するには、コンビニの商品力向上で入店客数を増やすことはもちろん、ローソンにしかない金融サービスを打ち出すことが不可欠だ。

 あるセブン&アイ幹部は「ローソン銀行は脅威に感じない。むしろファミマの動向が気になる」と言う。ファミマに設置されたATMでは、18年1月からゆうちょ銀行の顧客の利用料が原則無料化される予定。ゆうちょ銀行は地方を中心に顧客数が多いだけに、その動向を警戒する。

 魅力あるサービスをローソンが打ち出せなければ、セブンとの距離は縮まらない。