大半の企業、人件費の拡大懸念 同一労働同一賃金の導入に警戒感

政府は20日、非正規労働者の待遇を改善する「同一労働同一賃金」の実現に向け指針案を示して取り組みを強化する方針を表明したが、産業界では導入への警戒感を強めている。「制度が決まれば対応しなくてはならないが、コスト的には厳しい」(大手スーパー)と、人件費の拡大を懸念する声が圧倒的に多い状況だ。人手不足のなか人材流出の懸念もあり、産業界は対応に苦慮している。

 2008年に導入したりそなホールディングスは、正社員、限定正社員、パートナー社員について同一の職務であれば、基本給を同額とした。正社員には全国各地への転勤がある分、賞与や退職金などで差を設け、組織のバランスを図っている。

 一方、家具大手のイケア・ジャパン(千葉県船橋市)は14年に、有期雇用のパート従業員を無期の正社員に切り替えた。「従業員のやる気向上や退職率の低下につながった」(広報担当者)という。

 しかし、多くの企業では「運用がどうあるべきなのか不明」(IT大手幹部)、「同じ仕事でも正社員とアルバイトでは責任が違う。どこまでの差が許されるのか」(大手外食幹部)などと、導入に対する不安の方が大きい。

 厚生労働省によると、非正規の賃金水準は正社員の6割と待遇格差がある。今回の同一労働同一賃金では、非正規の賃金を正社員の8割程度の欧州並みを目指す方向だ。

 そのため、企業にとっては総人件費が上昇する可能性があるが、経団連の榊原定征会長は「働き方改革により長時間労働を抑制するので、人件費は削減できる」と分析する。

 経済同友会の小林喜光代表幹事は「制度を『トライ&エラー』で改善していく必要があるが、それ以前に企業トップの判断で取り組むこともできる」と、実効性を確保するためにも導入を急ぐべきだとの考えを示した。