求人情報 国サイト、最低賃金違反…7月以降66件

国が運営する就職支援サイト「ハローワークインターネットサービス」で7月以降、時給が最低賃金を下回る求人情報が少なくとも66件掲載されていたことが、厚生労働省への取材で分かった。ハローワークの職員が求人を受理した際、時給の確認が不十分だったためで、厚労省は「チェック体制が甘かった。雇用された人はいなかったが、あってはならないミスだ」としている。

 ◇厚労省「チェックミス」

 毎日新聞は全国のハローワークが7〜8月に受理したパート職の全求人情報をサイトを通じて閲覧。最低賃金に満たないものが複数見つかり、厚労省に事実確認を求めた。厚労省が調べた結果、最低賃金を下回る求人を7〜8月に66件受理し、サイトに掲載していたことが判明した。

 内訳は、工事現場の交通誘導やマンション管理、介護施設の給食調理補助などで、就業場所は東京都や神奈川県、大阪府が多かった。ハローワークの求人情報端末でも公開され、求職者19人に紹介状を渡していた。実際に就業した人はいなかったという。

 厚労省によると、事業者からの求人申し込みは全国544カ所のハローワークで受け付けている。最低賃金法などに照らして問題がなければ、コンピューターシステムに入力し、印刷して再度点検する。問題の66件は45カ所のハローワークで受理したが、こうしたチェックが機能しなかった。

 ハローワークでは同一事業者からの申し込みに備え、求人内容を2年間保存している。過去データを転用する際、毎年改定される最低賃金を給与が下回らないよう注意しなければならないが、事業者は時給を据え置いたままで、職員も気付かなかったケースが多かったという。

 また、最低賃金は都道府県ごとに異なるのに、職員が就業場所の正確な金額の確認を怠っていた例もあった。各ハローワークは事業者に連絡し、時給が最低賃金以上になるよう修正させた。

 ハローワークを巡っては2012年にも、最低賃金を下回る求人を受理したとして総務省の勧告を受けている。今回の事態を受け、厚労省は全国の労働局に対し、ハローワークでの点検を徹底するよう求める通知を出した。今後、時給が最低賃金を下回っていないかを自動チェックするシステムの導入も検討するという。

 厚労省職業安定局は「今後は一層、厳しくチェックするよう指導する」としている。

◇ハローワークインターネットサービス

 全国のハローワークが受理した求人情報を閲覧できるサイト。掲載件数は約120万件(21日現在)。事業者の連絡先もあり、ハローワークを通さずに求職者が直接応募できる。2014年にはサイトやハローワークを通じて約170万人が職を得た。