超高層ビル大震災後3倍増 阪神・淡路の被災5市

兵庫県内に建つ高さ100メートル以上に相当する「超高層ビル」が昨年末現在で、神戸をはじめ5市で計48棟に上ることが、各市消防局や消防本部への取材で分かった。阪神・淡路大震災前は神戸市内に16棟のみだったが、震災後22年を経て3倍に増えた。高層の建物は地震発生時、ゆっくりとした揺れが長く続く「長周期地震動」の影響を受けやすく、家具の転倒防止など対策が重要となる。

消防法は、高さ31メートルを越える建物を「高層建築物」と定義。神戸市消防局は2015年まで、高さ100メートル以上の建物を「超高層」と位置づけていた。これに基づき取材、集計した。マンションであれば、おおむね30階以上の建物が該当するという。

 市別の内訳をみると、神戸市は震災前に16棟だったのが40棟に増加。震災前にゼロだった宝塚市と尼崎市にそれぞれ3棟、西宮市と明石市で1棟ずつが建設され、県内では計48棟となった。

 震災以降に建てられたのは32棟で、県内で最も高い建物は神戸・三宮のタワーマンション「シティタワー神戸三宮」(54階建て、高さ約177メートル)だった。

■「長周期地震動」対策課題に

 長周期地震動の特徴は、震源が遠い場合でも起こることだ。2011年の東日本大震災では関西でも観測され、55階建ての大阪府咲洲(さきしま)庁舎(大阪市住之江区)が約10分間揺れ、庁舎の壁に亀裂が入るなどの被害が出た。

 気象庁は、長周期地震動の階級を強い順に4〜1とし、昨年10月の鳥取県中部地震では、兵庫県で「物につかまらないと歩くのが難しい」とされる階級2を観測した。

 免震や制震構造の高層建物は、地震発生直後の揺れでは倒壊の可能性は低い。ただ、内閣府の推計によると、発生が危惧される南海トラフ巨大地震による長周期地震動で、神戸市内の一部では構造によって高さ100メートル前後の最上階で揺れ幅が2〜4メートルになると想定される。

 このため高層階では家具の転倒防止が求められる。揺れが収まった後も、停電などで停止したエレベーターが復旧するまでの間、負傷者の搬送や地上との行き来は困難になるため、内閣府は普段からの備えが必要としている。