中国GDP6.7%増に鈍化 進出日本企業にも大きなリスク

米大統領に就任するトランプ氏が通商政策で中国に厳しい姿勢を示すことで、米中間の貿易摩擦が激化する公算が大きい。20日発表された2016年の中国の実質成長率は26年ぶりの低水準にとどまったが、対米輸出が落ち込めば、一層の悪化が予想される。中国に対する輸出や進出企業数が多い日本経済にとっても、大きなリスクとなる。

 トランプ氏は選挙期間中から中国を「為替操作国」と名指しし、中国からの輸入品に45%の高関税をかけると公言してきた。

 日本政府の関係者は「米国の強硬政策に対し、中国が簡単に折れるとは思えない」として、米中の“貿易戦争”が激しくなると懸念。シンクタンク幹部は「対米輸出が減り、中国経済がさらに減速するだろう」と予想する。

 足元では中国政府の景気てこ入れ策もあり、中国市場で恩恵を受けている日本企業は多い。日系自動車大手の16年の中国新車販売は、トヨタ自動車と日産自動車、ホンダ、マツダで過去最高を更新。新日鉄住金の進藤孝生社長は「自動車販売が堅調で、鉄鋼需要そのものは落ちていない」としている。

 ただ、トランプ氏の徹底した強硬姿勢に対し、日本の産業界から心配の声が上がり始めた。

 日本工作機械工業会の花木義麿会長は19日の定例会見で「米中の衝突が起きると、日本企業の経済活動で影響が出る可能性がある」と指摘。日立建機の辻本雄一社長は「トランプ氏の対応次第で(販売回復のムードに)水を差されるかもしれない」とした。

 また、百貨店などでの“爆買い”を支えた中国からの訪日客の1人当たり購入額も減っており、中国経済悪化でこの減速傾向が強まるとの指摘もある。

 財務省の貿易統計によると、15年度の日本からの中国向けの輸出額は13兆20億円と、対米国(15兆935億円)に次ぎ2位。電気機器や一般機械が品目の上位を占める。15年10月時点の中国進出企業の拠点数は3万3390にも上る。

 現在の日本経済は、外需主導で緩やかな回復軌道をたどっている。昨年7〜9月期の実質国内総生産(GDP)改定値は年率換算で1.3%増だったが、輸出が牽引(けんいん)した。輸出の中でも中国向けは重要な“エンジン”。中国経済が悪化すれば、安倍晋三首相が「道半ば」とする日本経済のデフレ脱却が、再び遠のくことにもなりかねない。