衣料店が「オールドネイビー」跡地を狙う理由

日本撤退を決めた米ギャップの低価格帯ブランド「オールドネイビー」の跡地に、国内外のアパレルが次々と出店を進めている。

オールドネイビーは2012年に日本に進出した。ショッピングセンター(SC)を中心に53店まで店舗網を広げたが、日本市場を攻略できずに今年1月、日本での営業を終えた。

 跡地にはすでにファーストリテイリング傘下の「ジーユー」やスウェーデンのH&Mなどが触手を伸ばしている。たとえばジーユーは昨年12月上旬に大阪府のイオンモール大日店に出店、H&Mは今年4月にイオンモール沖縄ライカム店に出店する予定だ。

 オールドネイビーを数多く誘致していたイオンモールでは、低価格アパレルを中心に後続店舗がすべて決まっているという。ここまで跡地の引き合いが強いのは、オールドネイビーが商業施設の一等地に入居していたケースが多かったためだ。

■撤退は千載一遇のチャンス

 今回のオールドネイビー撤退を千載一遇のチャンスと話す人物がいる。マックハウスの白土孝社長だ。

 マックハウスは「東京靴流通センター」を展開する靴小売り大手チヨダの子会社で、ジーンズを中心としたファミリーカジュアル衣料店を約440店舗展開している。

 白土社長はチヨダでマーケティング本部長や広報・IR部長を務め、2013年にマックハウスの社長に就任。「靴のことはわかっても、アパレルのことはまだ素人」(白土社長)ながら、社長就任後、客数アップにこだわった施策を打ち出し、既存店1店舗あたり年商平均1億円を目指した改革を進めてきた。

 同社の業績は厳しい。地方のロードサイド型店舗が中心で、開業から20年以上たったような老朽化した店舗も少なくない。2017年2月期も売上高348億円(前年同期比3.3%減)、営業利益5.3億円(同26.3%減)と減収減益の見通し。白土社長は「改革の途上であり業績は不安定。これまでの貯金を食いつぶしている状況」と言う。

復活へ新業態を開発

 その中で同社が進めているのが新業態の開発だ。

 新業態は2つある。「マックハウススーパーストア」は都市近郊型で、リーバイスのジーンズなどのナショナルブランド(NB)を充実させた店舗形態。もう一つの「マックハウススーパーストアフューチャー」は地方郊外型で、プライベートブランド(PB)主体の店舗形態だ。いずれも平均店舗面積は200坪以上と、従来の120坪と比べて大型化する。新規出店に加え、既存店の移転改装も積極化する。

 「これまでの当社の店は食べ物屋でいうと“昭和の食堂”。特にSCと競合する店では客足が遠のいてしまっている」(白土社長)。そんな同社にとって、SCの一等地にあるオールドネイビーの跡地は、格好の出店場所となる。

■新業態でオールドネイビー跡地に進出

 そして同社はオールドネイビー跡地に2店舗の出店を決めた。神奈川県のMrMax湘南藤沢SC店と鳥取県のイオンモール日吉津(ひえづ)店だ。

 MrMax湘南藤沢SCでは3月18日、マックハウススーパーストアがオープンする。1階角地の好立地で400坪を超える店舗面積はマックハウスにとって最大規模。ビジネスカジュアルも含めた1000アイテム、5万点に及ぶ、同社最大の品ぞろえを実現する。オールドネイビーの頃は同ブランドでも5位以内に入る年間7億円を売り上げていた。「オールドネイビーの売上高は最低限の目標だ」(白土社長)。

 他方、イオンモール日吉津店の跡地には、マックハウススーパーストアフューチャー業態での出店となる。こちらも店舗面積は400坪を超える。「日吉津にはほかにファミリーカジュアルを取り扱う店がない。都市型店舗よりNBを減らしてPBのジーンズ中心に展開する。地方であっても1店舗あたり3億円を狙う店を作っていきたい」(白土社長)。今後もオールドネイビー跡地には積極的に進出する計画だ。

 衣料専門店が単なる安さだけで太刀打ちできないことは、オールドネイビーの撤退からも明らかだ。マックハウスは消費者に対し新しい価値を提供できるか。オールドネイビー跡地での新業態が、同社復活の試金石となる。