H&Mが「日本限定商品」なしでも戦えるワケ

渋谷区・道玄坂にあるH&M旗艦店の「H&M SHIBUYA」。平日でも若い女性や子連れの女性など、女性を中心に店内はにぎわいをみせている。冬物セールは終盤を迎え、商品ラインナップは春物が中心だ。

H&Mはスウェーデン発祥(創業1974年)のアパレル企業。ファストファッション(最先端の流行を取り入れ、低価格で商品を提供する)を得意とし、「H&M」や「COS」などの店舗を世界64カ国、4300店以上展開する。同じくファストファッションの「ZARA」などを展開するスペインのINDITEXに次ぐ、世界第2位の売上高を誇る。

 H&Mが日本に上陸したのはリーマンショックとほぼ同時の2008年9月。東京・銀座に初出店すると、低価格志向が強まった消費者をがっちりとつかみ、2009年に上陸した米「アバクロンビー&フィッチ」や米「フォーエバー21」などとファストファッションブームを巻き起こした。

■ライバルは急激な成長を遂げたが…

 現在、H&Mは国内64店舗(2016年1月末現在)に拡大し、日本における売上高は約550億円まで成長を遂げた。毎年10店舗程度の出店を続けてきたが、H&M業態で閉店した店舗が一つもないことも特徴だろう。

 しかし、上陸から8年が過ぎ、日本国内の競争環境も変化してきた。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング傘下の「GU(ジーユー)」が日本発のファストファッションブランドとして急激に勢力を伸ばしているのだ。発足から10年を迎えたジーユーは年間売上高が1800億円超に成長し、年間約40店舗の積極出店を続けている。ジーユーの攻勢に比べると、H&Mの展開は緩やかなものにみえる。

 ライバルの急激な成長に直面し、H&Mはどんな手を打つのか。「出店は量よりも質だ。われわれは出店数や売上高の目標といった数字は求めていない」。こうはっきりと宣言するのは、今年2月1日に就任したH&Mジャパンのルーカス・セイファート社長だ。

 セイファート社長はH&M一筋20年の人物で、本社で商品・マーケティング責任者を経験し、当時36歳の若さでノルウェーの社長に就任(2009年〜2016年)したエリート。今後は日本と韓国で経営の舵取りを担うことになる。

日本向け商品なしでなぜ戦えるのか?

 セイファート社長が強調するのは「ファッションはグローバルなもの。パリであっても東京であっても、グローバルなトレンドは変わらない」ということだ。そのため、日本限定商品や日本向けの商品開発が必要だとは考えていない。

 H&Mは世界規模のファッショントレンドを注視している。「顧客がどのような商品をほしがっているのか」という点については、どの地域でも同質化が進んでいるという。

 もちろん、地域ごとのトレンドも重視した商品作りも進めているが、毎期投入する商品を取捨選択することで、需要に応えられると考えている。こうした分析から、日本では2月9日から本格的にキッズ商品の取り扱いを開始している。

 「たとえばレディスにしても、さまざまなコンセプトの商品がある。ベーシックな商品からオフィスで着るための商品、10代向けのファッションもある。幅広い商品があるので、”この地域ではこの商品がこれくらい売れる”とボリュームを調整することで地域に合った品ぞろえを実現できる」(セイファート社長)。

■年間10〜15店舗を着実に出店

 新規出店については、2017年度は年間で10〜14店舗ほど出店する計画だ。地方であれば確実に集客が見込めるイオンモールなどのショッピングセンター、都心部は路面店を中心に出店していく。直近の事例としては、日本から撤退を決めた米ギャップ傘下の低価格アパレル「オールドネイビー」の跡地である「イオンモール沖縄ライカム」に、沖縄1号店を出店(4月)することが決まっている。

 H&Mはあくまで地道に出店を続ける構えだ。セイファート社長は「日本にはユニクロが800店舗以上、ZARAが約100店舗ある。H&Mは規模が小さく、まだまだポテンシャルがある」としつつも、「年間10店から15店の出店を続けていきたい」と語る。2016年4月にはオンラインストアを開設した。ネットで商品を注文して店舗で受け取れるようにするなど、実店舗と連携したオムニチャネルの取り組みも進めていく。

 国内アパレル業界で地道な展開を続けるH&Mは、今後どこまでポテンシャルを発揮できるのか。めまぐるしく変わるトレンドをとらえ続け、日本の根強いファンを増やしていくことが成長のカギになる。