北朝鮮 上納金圧力、正男氏ともトラブルか

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(ジョンナム)氏(45)が殺害された事件について、中国など国外在住の北朝鮮住民の間で「国家への上納金を巡るトラブル」との見方が出ている。背景には昨年以降、北朝鮮当局から在外の北朝鮮ビジネスマンへの「上納圧力」が高まっていることがあるようだ。今年初めにはカネを巡るトラブルで失踪した北朝鮮ビジネスマンが相次いだという。

中国東北部で活動する北朝鮮当局者は事件直後の今月中旬、親しい中国人に「我が国がやったとは信じられない」と前置きしつつ、「万が一そうだとすれば、カネの問題ではないか」という推測を語った。

 また、別の中朝貿易関係者は「昨年末ごろ、朝鮮労働党関係者が正男氏に接触し、『忠誠金』と呼ばれる上納金を出すように求めたが、正男氏は応じるとも応じないとも言わなかった、といううわさが出ていた」と明かす。この関係者は「こうした対応が、国家財政が厳しい中、平壌で強い批判の対象となったのかもしれない」と指摘した。

 正男氏はマカオや欧州、マレーシアを拠点に不動産投資やワイン取引ビジネスを展開しているとされる。

 金党委員長は平壌市内のアパート建設などに膨大な資金をつぎ込んでいる。特に、平壌市内の黎明通りで建設中の70階建ての高層アパート群については今年1月、「4月15日までに完成させよ」と指示。こうしたプロジェクトの進展に合わせ、上納金をきっちり出すようビジネスマンらへの圧力が高まっているという。

 一方、中朝貿易関係者によると、正男氏殺害事件の少し前には中国東北部の中心都市、瀋陽で活動していた国家体育指導委員会の下部組織、朝鮮テコンドー委員会の関係者の男性が家族と共に行方不明に。この男性は同委員会の第7師範団に所属し、中朝間の体育交流などを推進しつつ、外貨稼ぎにも従事していた。

 同時期には、北京周辺で活動していた北朝鮮の貿易会社代表ら2人も姿を消したという。

 いずれも「(国家との)カネを巡るトラブル」が背景にあるといい、北朝鮮当局は、外貨稼ぎが目的で国外に送り出される労働者やスポーツ、芸術関係者らの審査を強化しているという。