大塚家具の久美子社長が窮地 父の経営復帰を求める声も

経営の主導権を巡る父娘の激しい骨肉バトルに勝利し、2015年から店舗改革を進めてきた大塚家具の大塚久美子社長。だが、その成果が表れないばかりか裏目に出る結果となり、窮地に立たされている──。

 2月10日に発表した大塚家具の2016年12月期決算は、売上高が前期比20%減の463億円、最終損益は前期3億円の黒字から一転、45億円の赤字となってしまった。じつに最終赤字は6年ぶり、しかも赤字額の大きさは創業以来最大だ。

 創業者の父・大塚勝久氏から経営権を奪取して以降、久美子社長は「おわび」を兼ねた大規模な安売りセールや、勝久氏時代の「会員制・高級家具」路線脱却を掲げ、中価格帯の品揃えを増やして誰でも気軽に入れる“カジュアル店”へと舵を切った。

 また、不要な家具を下取りしてクリーニングや修理を施した後に販売する「リユース家具」事業にも力を入れてきた。

 しかし、久美子社長にとっては思い切ったビジネスモデルの転換だっただろうが、消費者の来店動機や購買意欲を高めるところまでには至っていない。

 経済ジャーナリストの松崎隆司氏は苦戦の原因をこう分析する。

「久美子社長体制になって変わったのは、会員制で販売員がつきっきりという接客スタイルを廃したことぐらいで、品揃えは中価格帯が中心といっても相変わらず高級家具もありますし、中途半端な印象が拭えません。それでいて、ニトリやイケアのように低価格路線とは違うと言い続けている。

 どんなターゲットに向けてどんな家具を売っていこうというマーケティング戦略が曖昧で絞り込めていないため、他店との差別化ができていないのです。家具のリユースにしても発想は良かったものの、中古家具を多く抱えて通常の販売家具のアフターケアが疎かになっているという話も聞きます。

 これまでの大塚家具ファンだけでなく、新たなお客さんも囲い込めていないというのが現状でしょう」

 結局は、勝久氏が続けてきた高級路線の踏襲こそが大塚家具の“らしさ”であり、経営の安定にも繋がっていたのではないか、という皮肉な見方も出始めている。当の勝久氏は昨年より別の高級家具店「匠大塚」を埼玉県・春日部と東京・日本橋に展開。着々と業容を拡大させている。

 さて、久美子社長は今後どんな巻き返し策に打って出るのか。

 3月10日には新たな「経営ビジョン」を発表。2019年末までに既存店の閉鎖や面積縮小でコストを削減する代わりに、“ミニ大塚家具”ともいうべき小型専門店を30店舗増やす計画を示したが、「近年の業績不振で手元資金も枯渇しているため、店舗の閉鎖や新設がどこまでスムーズに進むかは不透明」(前出・松崎氏)との指摘は多い。

 そもそも、久美子社長がそこまで経営の陣頭指揮を執り続けられる保証もない。3月末に行われる大塚家具の株主総会に向け、議決権行使助言会社のISSが久美子社長再任に反対しているとの情報もある。

 2年前の父娘バトルでは久美子氏を支援した株主の中には、勝久氏の“復帰”を求める声さえ出ている。

「久美子社長とのコミュニケーション不足や不信感から、会社を逃げ出して匠大塚に移る幹部や社員が後を絶たないし、3年間80円配当を続けるという“公約”も守られそうにない。このまま業績回復のメドが立たなければ、また勝久氏に経営を託したほうがいい」

 勝久氏はすでに大塚家具の株を大量に売却し、持ち株比率は5%を下回っているため、「本人に復帰の意思はまったくない」(匠大塚関係者)とはいえ、そこは自らが築いた看板。娘との遺恨も晴らすべく、再び何らかの形で経営参画する可能性もないとはいえないだろう。