トランプ政権の税制改革は、本当に”驚異的”か

2月9日に「驚異的な税制改革を発表する」と豪語してから、約2ヵ月半。就任100日を控え漸く全容が明らかになりました。本当に”驚異的”だったのでしょうか?

ムニューシン米財務長官とコーン国家経済会議(NEC)議長、ゴールドマン・サックス出身コンビが記者会見に臨んで配布した税制改革の“基本指針”は、記者団を驚きの渦に巻き込んだに違いありません。税制改革案が500語以下にとどまると、誰が予想したでしょうか。誰もが理解しやすいよう、配慮したのかもしれません。

税制改革の柱である法人税は、共和党案の25%を採用せず報道通り選挙公約の15%を維持しました。米国企業による海外利益の本国送還を促進するため、一度限りの大幅なレパトリ減税も行う方針も表明。“地域的”な税制の導入、すなわち米国に本籍を置く企業の海外利益を法人税対象外とする計画も盛り込んでいます。ここでは明記していませんが、会見では特定目的会社(SPC・TMK)や有限責任事業組合(LLP)向けのパススルー課税も現行の39.6%から15%へ引き下げるといいます。プライベート・エクイティ(PE)やかつてのトランプ米大統領のような富裕層に、多大な恩恵を与える見通しです。

非営利団体の”責任ある連邦予算委員会(CFRB)”は、今回の税制改革に対しこのような試算を弾き出しました。一連の法人・事業体向け減税案は2027年までに利子を含め連邦債務を6.2兆ドル押し上げ、国内総生産(GDP)比では足元の89%から111%へ膨らむとか。国境調整税という歳入増の秘策を打ち出せなかったため、法人部門だけでこの状態。財政面からは、確かに”驚くべき”税制改革といっても過言ではないでしょう。