好調マックを脅かす新興ブランドの買収策

■本当にハンバーガーは「飽きられた」のか? 

 いまハンバーガー業界が非常な盛り上がりをみせている。

 ひとつは低迷していた日本マクドナルドホールディングス(以下、マクドナルド)の急回復だ。直近の業績(2016年12月期)は、売上高2266億円で経常利益は66億円の黒字。前年度は売上高1894億円、経常利益は258億円の赤字だから、V字回復といっていいだろう。

 マクドナルドの低迷時には、「ハンバーガーは飽きられた」という報道もあったが、消費の現場で起きていることは「ハンバーガーの復権」である。たとえば2015年11月、日本に上陸した「シェイクシャック」。NY発のハンバーガー店で、ホルモン剤無投与の牛肉など原材料の品質の高さを謳う。現在、国内では3店舗を運営しているだけだが、「マクドナルドキラー」とも呼ばれ、大きな話題を集めた。

 さらに国内勢では、今年、新規上場したユナイテッド&コレクティブが運営する「the 3rd Burger」が人気を集めている。現在は青山や吉祥寺など4店舗にとどまるが、今後、関東圏(1都3県)で150店舗の出店を計画しているという。

 こうした動きは「ハンバーガー」という商品がいかに強いかということを示している。そしてM&A市場においても、この盛り上がりを受けた動きが起きている。ひとつは約160店舗で国内5位の「フレッシュネスバーガー」、もうひとつは、約130店舗で国内6位の「ファーストキッチン」である。

 フレッシュネスバーガーは、「ほっかほっか亭」の創業メンバーである栗原幹雄氏が1992年に創業したハンバーガーチェーンである。その後、2007年にユニマットグループの子会社となり、2013年から16年3月まで、マクドナルド出身の紫関修氏が社長を務め、約150店舗を展開。そして、16年10月に居酒屋大手のコロワイドに買収された。

 コロワイドは、外食業界の中でもM&Aの活用に長けた企業である。最近では、2013年に牛角のレインズインターナショナル、2015年にかっぱ寿司のカッパクリエイトを買収している。こうした大型のM&Aを繰り返した結果、外食業界の売上高ではゼンショー、すかいらーくに次ぐ3位につけている。なお、4位が日本マクドナルドホールディングスである。

■マクドナルドを追撃するのはどこか? 

 フレッシュネスバーガーを買収したのは、正確にいえばコロワイドではなく、同社の子会社のレインズなのだが、両社にとってもファーストフード業態は、初めての参入である。これは裏を返せば、自社のブランドポートフォリオに欠けていた部分をM&Aによって補完した形となる。今後、コロワイドは、牛角で培ったフランチャイズノウハウを活用して、フレッシュネスバーガーでも出店攻勢をかけていくとしている。

 一方、ハンバーガーで国内6位のファーストキッチンは、1977年にサントリーの子会社として発足した老舗だ。第1号店は池袋で、現在は約130店舗を展開しているが、16年6月、同じハンバーガーチェーンのウェンディーズ・ジャパンがファーストキッチンを買収すると発表した。

 ウェンディーズは米国発祥で、28カ国に6500店を展開している。日本には1980年に上陸したが、経営不振のため2009年に撤退していた。その後、日本に「ドミノ・ピザ」を持ち込んだアーネスト・M・比嘉氏が日本展開の権利を得て、2011年に再上陸させた。しかし、出店場所に苦戦し、16年6月時点では国内1店舗にとどまっていた。

 ウェンディーズは、本買収を行う前に、ファーストキッチンとのコラボ店を2店舗展開していた。そのコラボ店の業績が好調だったからこそ、今回の買収が実現したという。今後、コラボ店を増やしていくのかということは決めてはいないとのことだが、オーナーの変わったファーストキッチンのリブランドをどのように進めようとしているのか、非常に興味深いところである。

 日本のハンバーガー業界の店舗数ランキングを見ておこう。

【1位】マクドナルド ……2956店舗(16年12月末時点)
【2位】モスバーガー ……1359店舗(16年12月末時点)
【3位】ケンタッキー ……1154店舗(16年12月末時点)
【4位】ロッテリア ……368店舗(17年4月11日時点)

 その次に続くのが約160店舗のフレッシュネスバーガーと約130店舗のファーストキッチンとなる。この2社が、新しい資本のもと、どのような戦略で上位4社と戦っていくのか。はたまた、さらなるM&Aが起きるのか。そして、新興のハンバーガーチェーンが本当に台頭するのか。ハンバーガー市場をめぐる戦いは、新たな局面を迎えている。