コードレス電話、機能の進化続いていた 高齢者層にターゲット絞り込み

携帯電話やスマートフォンの普及で、すっかり影が薄くなったコードレス電話機だが、機能は進化を続けている。携帯電話やスマホをあまり使わず、一日の多くを自宅で過ごす高齢者向けとして、見守り機能や「振り込め詐欺」対策機能を搭載した商品が登場。デザインを工夫し、使い勝手を高めたものもある。高齢者層にターゲットを絞り込むことで、縮小傾向にある市場での勝ち残りを目指す。

「見守りモーニングコールに応答がありません。すぐに確認してください」

 シャープのコードレス電話機「JD−AT82CE」(税抜き市場想定価格2万2千円)は、独り暮らしの高齢者の家族らに異変を知らせる機能がある。あらかじめ設定しておいた時間に毎日呼び出し音が鳴り、応答がない場合には登録先の番号に自動で通知する仕組みだ。

 「家族への通知時に電話料金がかかるだけで、月額費用や新たな契約、設置工事などは不要。インターネットの知識がない高齢者でも手軽に始められる」(ネットワークソリューション事業部の半谷知久氏)のが売りだ。

 さらに付属する緊急呼び出し機器をトイレや寝室に設置でき、ボタンを押せば登録している番号に通知できるようにしている。未登録の番号から着信があれば自動音声で注意喚起するなど、振り込め詐欺対策の機能なども盛り込んだ。

 パナソニックの「VE−GD76」シリーズ(同1万9千円から、15日発売)は、着信音がはっきり聞えるようにする「オート呼出音量」機能を採用。掃除機をかけるなど親機の近くで大きな音がしていると、呼出音が自動的に最大音量になる。

 さらに、アンテナ部などが光る「着信お知らせLED」も搭載することで、「気づきやすさを大幅に向上させた」(担当者)。呼出音が鳴る前に自動で相手に通話を録音する旨の警告メッセージを流す「迷惑防止」機能も搭載している。

 オンキヨー&パイオニアイノベーションズの「TF−FD35」シリーズ(同1万1千円前後から)は、親機の前面に液晶画面を配置。着信時には見やすく、待ち受け時には時計としても使えるようするなど、使い勝手やデザインに工夫を凝らす。

 国内の家庭用コードレス電話機市場は携帯電話やスマホの普及に伴って縮小傾向にある。情報通信機器メーカーなどが加盟する情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ、東京)の調査によると、平成28年度の出荷台数は114万台で、27年度(150万台)と比べて30万台以上も減った。

 ただ、シャープ製のコードレス電話機では購入者の約7割は60歳以上が占めているという。シャープなど各社が高齢者の被害が多い振り込め詐欺の対策機能などを搭載させているのはこのためだ。「高齢者を中心に携帯電話やスマホの普及が進む現状でもコードレス電話のニーズはまだまだある」(シャープの半谷氏)とみられ、高齢者の安全・安心確保に向けた機能の充実が図られそうだ。