日本郵政 野村不動産買収、凍結へ 価格折り合わず

日本郵政が、不動産大手の野村不動産ホールディングス(HD)の買収交渉を凍結する検討に入った。買収価格を巡り、野村不動産HDの大株主の野村HDとの折り合いがつかず、交渉が難しくなったためとみられる。郵便・物流事業の業績が低迷する中、日本郵政は、不動産事業の強化で収益の底上げを狙っていたが、新たな戦略の策定を迫られそうだ。

 日本郵政は、直営郵便局約2万局を持つほか、国営郵政時代からの名残で全国の主要ターミナル駅前などの一等地に巨大な郵便局の建物を保有している。不動産事業の強化に向けて、野村不動産HDのノウハウを取り込む狙いで買収交渉を進めていた。一方、分譲マンション事業を手がける野村不動産HDにとっても、都心の不動産開発事業では、日本郵政傘下入りは相乗効果があるとの見方があった。

 しかし、日本郵政は2015年に買収したオーストラリアの物流子会社の業績低迷により約4000億円の損失を計上。その影響で17年3月期連結決算は民営化後初の最終(当期)赤字に転落し、買収戦略の失敗を投資家から批判されていた。5月中旬の日本郵政による買収検討との報道を受けて、野村不動産HDの株価が上昇。その後、株価は高止まりしており、関係者によると「社内では高値づかみになるとして、買収に慎重な対応を求める声が上がっていた」という。