岡山元同僚女性バラバラ殺人事件 住田紘一

sumita2017sikei0001平成23年9月30日、住田紘一(当時29歳)は、岡山市北区の元勤務先に退社手続きで訪問した際、同僚で派遣社員の加藤みささん(当時27歳)を言葉巧みに誘い出し会社の敷地内にある倉庫で強姦。その後、加藤さんの「命だけは助けて」という哀願も無視してナイフで10回以上刺して殺害。現金2万4千円も奪って、車で遺体を大阪市内の自宅近くにあるガレージへ運んで遺体をバラバラに切断して近くのゴミ捨て場や河川に遺棄した。

会社では、勤務中に加藤さんが行方不明になったことで大騒ぎとなった。だが、行方は杳としてつかめず警察に通報。岡山県警は、会社の防犯カメラに加藤さんと一緒に歩いている住田を割り出し重要参考人として手配。10月6日、大阪府警は自宅にいた住田を任意同行して取り調べたところ、犯行を認めたため殺人容疑で逮捕した。

岡山元同僚女性バラバラ殺人事件現場はベネッセ子会社シンフォーム

岡山市北区高柳東町の地域掲示板を調べれば、事件があったのはベネッセの系列会社シンフォームであることが判明。テニスコート近く、北側駐車場とのこと。

住田紘一死刑囚の殺人動機

住田は、犯行の10日前の9月20日に会社を退社した。犯行当日は、社員証を返却するため元勤務先に出向いた。手続きを終えた住田は、事前に強姦を計画していた3人の女性のうち、加藤さんを連れ出すことに成功した。住田は、元総務で、加藤さんは庶務を担当。2人は別のフロアで勤務しており、書類のやりとりをする程度の関係だった。犯行の動機は、「付き合っていた女性が別の男と結婚したため、むしゃくしゃした欲求不満を晴らそうと思った」と自供。実に短絡的な動機であった。

岡山元同僚女性バラバラ殺人事件 住田紘一 裁判員裁判

殺害の事実について争いはなく、量刑が争点となった。
 2013年2月5日の初公判で、住田紘一被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、住田被告が交際相手とうまくいかなかったことなどから欲求不満で女性を強姦したいと常日ごろから思い、女性を乱暴して殺害しようと計画したと指摘。「顔見知りの中から好みの女性を3人選び、声をかけてついてきてくれたのが被害者だった」とし、「住田被告は『誰にも言わんから。助けて』と懇願する被害者を無視し、殺害した。殺害態様は残虐で、極めて悪質」と述べた。
 弁護側は「計画性があっても内容は稚拙。前科もない。被告が動機をすべて語っているわけではない」と述べるとともに、強盗殺人罪の法定刑は死刑か無期懲役だが、死刑判断の基準「永山基準」を説明して、「(死刑には)被害者の人数が重視される。住田被告の両親も更生に協力する。どの刑がふさわしいが考えてほしい」と裁判員に訴えた。
 同日の被告人質問で、住田被告はマンションの同じ階に住んでいた女性を襲う計画も立てたが失敗に終わり、諦めたと述べた。その後誰を狙ったか尋ねると検察側の質問に「今回の被害者を含む3人です」と答え、被害者の女性ら3人を標的にしたことを明かした。住田被告は、以前交際していた別の女性と結婚した男性にうらみを募らせ、男性殺害を計画していたことも明らかにした。検察側に「取り調べに『出所したら男性を殺す』と話していたが、今もそう思っているのか」と聞かれ、「もちろんです」と即答した。
 6日の公判で住田被告は検察官に「殺人という行為についてどう考えるのか」と問われると、「殺人は手段として是認される。目的達成のためなら殺すことも許される。思いとどまるのは、殺人を犯して自分が捕まるかどうか、だけです」と述べた。司法試験を受験した経験もある住田被告は「犯罪者は殺してしまえばいい」と持論を展開。「今、あなた自身が犯罪者だ」と問われると「自分だけは特別視しています」と話した。証人尋問で被害者の父親が「父として一人前の幸せを与えてあげられなかった。命尽きるまで娘に謝り続けたい」と声を震わせ、「住田被告からは一度も謝罪がなく、許せる日が来るとは思えない」と厳しい口調で話した。そして「最低でも死刑。本当は楽に死んでほしくない。つらかったり、苦しんだ結果、死んでほしい」と訴えた。
 7日の公判で住田被告は被告人質問で「本当はずっと謝罪したいと思っていた。死刑になりたくて悪いことばかり言った」と態度を一変。「ごめんなさい」と涙を流した。

 8日の論告で検察側は「計画的な犯行で残虐、極めて悪質。遺族の処罰感情はしゅん烈だ。更生の可能性はない。被害者が1人であることも酌量すべき事情とならない」などとして死刑を求刑した。遺族は被害者参加制度を利用し「最低でも死刑を」と訴えた。被害者の父親はこの日、証人尋問で「私たち家族をどこまで愚弄する気か。昨日、被告が見せた涙は、悔いた涙とは思えない」と話した。弁護側は最終弁論で「計画は稚拙。犯行直前に婚約が破談になるなど同情すべき点がある」と主張。強姦や強盗目的などの事件の真相は、起訴後の被告の自主的な告白によって判明したことに加え、意図的に心情を悪くする発言をしたことにも触れ、「被告なりに命をもって償おうとしていた。極刑を言い渡すにはなお躊躇する事情もある」と訴え、無期懲役を主張した。一方で、被告は「今の私にできることは最も重い罪を受けること」と陳述した。
 判決で森岡裁判長は、住田被告が犯行場所を下見し、凶器のバタフライナイフを事前に用意するなど、「全体として入念に準備された計画性の高い犯行だ」と指摘。「被害者は強姦された上、必死の懇願もむなしく何度も刺され、無残にも殺害された」と犯行の残忍性と強固な殺意を認定したその上で、公判開始まで遺族に謝罪しなかったことなどから「反省や謝罪は不十分で、更生の可能性は高いとはいえない」と断じた。そして住田被告に前科前歴がないことや起訴後に検察官に性的暴行などを告白した点に触れ、「殺害された被害者は1人だが、結果は重大であり、死刑を回避するほど特に酌量すべき事情があるとはいえない」とした。

 弁護側は即日控訴した。3月28日付で住田被告は控訴を取り下げ、確定した。住田被告は弁護人に「判決結果は当初から受け止めようと思っていたが、迷いがあった。本当に申し訳ない。被害者に対して思いをはせ、自分にできる供養をしたい」と話したという。

住田紘一 20170713死刑執行