ソフトバンクの「解約率」から見えてくる、都合のいい数字の作り方

8月7日に行われたソフトバンクグループの決算会見の中で、孫正義社長は「解約率が大幅に改善している」と発表しました。孫社長が発表した資料では、はじめてソフトバンクがKDDIの解約率を下回ったとのこと。しかし、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でスマホジャーナリストの石川温さんは、孫社長の発表した解約率が「眉唾もの」である根拠を挙げ、大手通信事業者3社の「本当の解約状況」を暴露しています。

孫社長「解約率が大幅に改善。KDDIを下回る初めての快挙」━━決算短信から見えてくる、都合のいい数字の作り方

8月7日のソフトバンクグループ決算会見で気になったのが、モバイルの解約率に対しての孫社長の発言だ。

「解約率が大幅に改善しており、競合他社のKDDIを下回った。初めての快挙」

として、おなじみの縦軸がないグラフを背に自慢げに語っていたのだ。解約率はNTTドコモが0.67%なのに対し、ソフトバンクは0.79%、auは0.91%とある。グラフを見る限り、他の2社は解約率が上昇傾向にある一方、ソフトバンクは大幅に改善しているといいたいのだろう。

その右下には出典が書いており、各社の決算資料から引用したようだが、これを見てみると、「NTTドコモ:解約率」「au:パーソナル事業解約率」「ソフトバンク:ハンドセット解約率」とあった。

「ハンドセット解約率」。つまり、データ通信端末などを抜いた解約率だと思われる。

実際にソフトバンクの決算短信をチェックしてみると、解約率が2つ存在しており、主要回線解約率は1.13%なのに対し、携帯電話解約率が0.79%なのであった。

この携帯電話解約率にはスマホ及び従来型携帯電話、音声SIM契約が対象で、データ通信端末やPHSなどは含まれないようだ。

ソフトバンクといえば、数年前まで、データ通信端末やフォトフレームなど、メイン端末ではない回線を稼ぎまくり、契約の純増ナンバーワンをアピールしてきたのではなかったか。純増数の頃は、そうしたデータ通信端末で数を水増ししつつ、純減傾向になったら、それらを抜いて解約数を出すというのは、理解に苦しむ。実際、主要回線解約率の1.13%は前期と比べて横ばいだ。

こんな数字で比べられたら、auもかわいそうだろうと思って、KDDIの決算短信も調べてみたら、auの0.91%という数字もデータ通信端末やタブレットを抜いた数字であった。

どうやら、先にKDDIがデータ通信端末を抜いた数字で解約率を出していて、表向き、いい数字を見せようとしていたら、同様の手法を真似してきたソフトバンクに解約率で抜かれるという状況に陥ったようだ。

一方、NTTドコモの0.67%という解約率は、MVNO関連は含まれていないが、データ通信端末やタブレットの解約をしっかりと含んだ数字だ。吉澤和弘社長が会見で「解約率が上昇したのは、2年前に販促をかけたタブレットの解約による特殊要因」と語っており、しっかりとタブレットの数字が計上されているのがわかる。

ソフトバンクとして、これから注視しなくてはいけない数字は通信ARPUだろう。実際のところ、今期のARPUは3830円であり、前年同期に比べて220円も減っている。

決算短信では「スマホ契約は増えたが、ワイモバイルの構成比率上昇と、おうち割光セットの割引によるマイナス影響が上回った」としている。

今のソフトバンクはワイモバイルが好調な点に支えられているのだろうが、結果として、一人あたりのARPUは下がってしまうのは避けて通れない。

その点、KDDIは、UQモバイルが別会社であるため、UQモバイルが増えても、ソフトバンクのような影響はないだろう。ただし、新料金プランによって、どれだけARPA(KDDIはARPUではなくARPA)が下がってくるかが見物だ。

いずれにしても、ここ最近の決算会見は、悪い数字はプレゼン資料から外すということをやりがちなので、決算短信を含めて、こまめに数字や注記を見ていく必要がありそうだ。