富裕層は「スマホのチラ見」を絶対しない

■若いお金持ちほど背伸びをする

富裕層にも、もともと資産家の方とビジネスなどで成功してキャッシュフローがたくさんある方、その両方がある方がいます。ファイナンシャル・プランナーという仕事柄、それぞれのタイプのお金持ちにお会いする機会がありますが、資産家の方と、成功してお金持ちになった方とでは、行動や立ち居振る舞いにどこか違いがあるように感じます。

資産家、つまりもともとお金持ちの方々は、上品でガツガツしたところがなく、堅実で謙虚な人が多い。流行のものを次々買うようなことはなさらず、本当にいいものを大切に使っています。おじいさまやおばあさま、ご両親から受け継いだものを大切に使われる人も少なくありません。いいものをこれ見よがしに見せつけたり、ひけらかすこともない。

これに対して、若くしてキャッシュリッチになった人には、背伸びをする人が目立ちます。「周囲の人が持っているから」という理由でハイブランドのバッグや時計を身につけ、高級車をローンで買う。いずれも奥様主導で無理に背伸びをして買うというケースが多い。いずれ生活が立ちゆかなくなったり、下流老人にならないかと心配になることもあります。

■「こだわり」への出費は惜しまない

資産家の人たちは、お金に対する考え方も堅実です。キャッシュフローはそれほど潤沢ではなくても、堅実な生き方が身についているため、困ってはいません。運用も過分なリスクを取ることなく、代々受け継がれてきた資産を守ることを重視します。とはいえ、「こだわり」への支出は惜しみません。

あるとき、資産家の奥様に「キャッシュフローがなくて大変なの。アドバイスをしてくれないかしら」とお願いされてお話をうかがったところ、会費が高額な有名テニスクラブの会員権や、あまり使っていない別荘があることがわかりました。ファイナンシャル・プランナーとしては、まっさきに手放してほしい資産です。ところが、「そのクラブは社交の場だから手放せない」「その別荘は夏の社交に必要だから売れない」とおっしゃる。社交といっても、夜な夜な高級なお店をはしごするのではなく、お茶の会やホームパーティをする程度です。ただ、代々続いているものだけに、「それは譲れない」とおっしゃる。本当のお金持ちは、自分たちなりの「こだわり」があり、そこへの出費は惜しまないのです。資産家のお金への考え方を目の当たりにした思いがしました。

■「相当詳しいのだな」と感じさせる

お金の使い方も上手です。前述のとおり、「こだわり」があるものには出費を惜しみません。お茶会の和菓子は老舗からの取り寄せ、着物は老舗中の老舗に仕立ててもらうという話を、嫌みなくさらっとされる方がほとんどです。また、ブランド品はブランドショップで定価で買い、デパートの商品は外商部に自宅まで商品を持ってきてもらいます。だからといって、高級品ばかりを買うわけではありません。日用品はスーパーで買いますし、「今日はお客様が大勢いらっしゃるから、コストコに食料品の買い出しに行く」ということもあります。お金を使う場合の目的意識が明確で、それに適したお店を使い分けられるのも、堅実な資産家らしい行動といえそうです。

「こだわり」のなかには、「自分の趣味」も含まれます。茶道や華道をなさっている方もいれば、愛犬に愛情を注いでいる方もいます。草木を眺めながら散歩をするのが好きな方もいます。

趣味の内容はさまざまですが、多くの方がそれを極めていて、生活のそこかしこにそれが反映されています。世間話で趣味を話題にされるだけでも、「相当お詳しいのだな」と感じさせるレベルの方が少なくありません。

■「資産に働いてもらう」重要性を理解している

運用方法も堅実です。金融資産は国際分散投資が大前提で、保有する企業も、長い目で見て成長が期待できる国際優良企業や、安定配当が期待できる企業を選んで分散投資しています。そのような銘柄をご両親から相続し、ゆくゆくは子どもにも持たせたいと考える方が多いのも、資産家ならではといえるでしょう。

なかには、資産の一部でトレードを楽しむ方もいます。例えば、ある方は、商品(コモディティ)価格が上昇する前にいち早く購入し、価格が上昇したタイミングでしっかり利益確定していらっしゃいました。豊富な人脈から「本当にいい情報」だけが入るため、いわゆる“目利き”になれるのでしょう。もちろん、金融資産の大半をトレードにつぎ込んだりして、リスクを取りすぎる方はいません。

■生命保険の活用も上手

ご家族の資産、つまりファミリーのマネーを運用する会社をつくっている方々もいます。会社にすることで運用にかかる費用を経費にしたり、息子や娘をその会社の社員にすることで節税につながるだけでなく、家族全体で資産を守るという意識を高めることにもつながるのでしょう。ほとんど使わないけれど「手放したくない」国内の別荘や海外の不動産も、賃貸事業をすればキャッシュフローを得ることもできます。これによって、一家の大黒柱に万が一のことがあっても遺された家族の生活を守れるという安心感も得られます。だから「先祖代々の資産を売らずに守る」という判断がなされるのでしょう。“資産に働いてもらう”という考え方が身についているのも、資産家ならではの特徴です。

生命保険の活用も上手です。保険会社も資産家の方々には「定期付き終身保険」や「アカウント型」のような商品でなく、その家族に適した優良な保険を紹介しているのだとは思いますが、しっかりと保険にも入っている方が多いように見受けられます。非常にスマートな資産運用ができているのも、資産家の共通項といえるでしょう。

■できない約束ははじめからしない

忙しい人が多いにもかかわらず、スケジューリングがきちんとできていて、あたふたした印象がない人が多いのも資産家の特徴です。どんなに忙しくても誰かと会食する場合には、ゆっくりと食事と会話を楽しむ。忙しさをアピールするかのようにスマートフォンをチラチラ見るようなマネは、絶対にしません。そんなことをしたら、「早く食事を終わらせよう」と相手に気をつかわせますし、そもそも失礼です。「できない約束はしない」という話もよく聞きます。

話題が豊富な人が多いものの、自分ばかりが話すことはありませんし、ましてや仕事上の成功談をすることもありません。「相手をいやな気分にさせない」「楽しんでもらう」ことを大切に考えているからでしょう。何度もお目にかかっているのに、新たな発見があり「奥が深い人だな」と思わせる方も多いように思います。