「有事の円買い」って? =北朝鮮リスクで進行

―最近、時々聞く「有事の円買い」とは。

 金融危機や紛争など異変が起きた際、投資家がドルなどの外貨やリスクの高い新興国の金融商品を売って、「安全な資産」とされる円を買うことだよ。リスク回避の流れが強まり、円高が進んでいる。

 ―例えばどんなとき。

 1993年の北朝鮮のミサイル発射や2008年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災、昨年6月に英国の欧州連合離脱が決まった際などに急速に円が買われた。今月29日早朝の北朝鮮のミサイル発射後は、一時1ドル=108円30銭近辺まで上昇、前日比1円近い円高となった。

 ―なぜ円は安全資産なの? 
 円は貿易などの決済に使われる主要通貨の一つで、取引量が多い。また経済大国の日本は経常黒字国で、世界最大の対外資産を抱える債権国としての信用力もある。かつては「有事のドル買い」という言葉があったが、01年の同時多発テロや08年の金融危機などを経て、ドルは安全資産と言われなくなったそうだ。

 ―危機にさらされている日本の通貨が安全? 
 外国為替市場はさまざまな思惑で動く。ミサイルで被害が出て損害を埋めなければならない事態になれば、日本は海外に保有するドル建て資産などを売って円に替えようとするだろうとの観測から、外国人勢を中心に円が買われているとの解説がある。

 また、ここ数年の外為相場の動きから「有事なら円買い」という行動が染み付いていて、条件反射的に円が買われているようだ。これまで円を売っていた人が買い戻しており、そうした流れに乗じて利益を得ようとする投機的な円買いもある。

 ―円相場はどうなるの。

 外為市場で、北朝鮮の挑発が戦争に発展すると本気で思っている人はまだ少ない。大きな情勢変化がなければ、当面は円高傾向が続きそうだ。ただミサイルが日本国内に着弾して本当に被害が出たら、急激な円安に転じるだろうと話すディーラーもいる。

 ―外為市場は観測に流されやすいのね。

 東日本大震災直後にも、大規模な海外資産売却があるとの観測で円高が進んだ。事実というよりも臆測の面が強かったが、バスに乗り遅れるなとばかりに市場では円買いが加速。円高が輸出企業の業績を悪化させ、日本経済を冷やした苦い経験がある。