今回の北朝鮮の核実験は水爆の実験ではないが、その前段階まで来ている

北朝鮮は9月3日午後0時半頃、北東部の豊渓里で6回目の核実験を行った。北朝鮮は、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に成功した」と発表した。日本の気象庁はM6.1と発表し、小野寺防衛大臣は、「推定出力が約70ktになる」と述べた。

 推定出力が約70ktであることは、前回5回目の爆発規模の約7倍、第2回から第4回目までの爆発規模の約14倍である。重水素を使用して爆発効率を向上させる「ブースト型核分裂爆弾」であると推定できる。ブースト型爆弾の特色は、通常の核爆弾の10倍(広島型の15ktの10倍だとしたら150ktの威力)の威力まで高めることができるし、またその反対に1/5〜10倍の1ktまで縮小できるものである。

 例えば、米国の水素爆弾は約10Mtクラス、中国は3.3〜4.0Mtクラスが存在する。これらは、通常型の200〜500倍の威力だ。この威力に達しない限り、水素爆弾の実験に成功したとは言えない。 

北朝鮮の今回の核実験規模は70ktであり、通常のものよりも3〜5倍の規模であることから、ブースト型核分裂爆弾であると推定できるが、水素爆弾の実験が成功したとは評価できない。 但し、ブースト型核分裂爆弾の完全な成功は、この技術を保有することで、水素爆弾実験の前段階に到達できたものと評価でき、水素爆弾実験成功の鍵を掴んだと言える。

私は、北朝鮮が核実験を実施するとすれば、9月9日の建国記念日かその直前であると見積もっていた。9月3日というのは、意外と早く、建国記念日までに時間がある。北朝鮮は、9月9日までに何か大きなことを実施してくるに違いない。それは、別の坑道で核実験の準備が完成していることから、更に威力を増大するか、或いは縮小した核実験を行う可能性もある。または、これまで実施したことがないミサイルの実験や、ハワイかグアム近海にミサイルを撃ち込むことも考えられる。

 北朝鮮は、米国との交渉になった場合、交渉を有利に進めるために、例えば、小型化した核や米国に届く弾道ミサイルの保有を認めさせる交渉戦略を進めているのであろう。「北朝鮮が核や弾道ミサイルを保有することを認める。だが、使用は認めない」といった交渉になるのではないか。

西村 金一(にしむら きんいち)
1952年、佐賀県生まれ。陸上自衛隊少年工科学校生徒入隊、法政大学文学部地理学科卒業、自衛隊幹部候補生学校修了、幹部学校指揮幕僚課程(33期CGS)修了。
防衛省情報分析官、防衛研究所研究員を経て、第12師団第2部長、少年工科学校総務部長、幹部学校戦略教官等として勤務。定年退官後、三菱総合研究所国際政策研究グループ専門研究員、ディフェンス・リサーチ・センター研究委員、現在は軍事・情報戦略研究所所長。
著書『北朝鮮の実態』―金正恩体制下の軍事戦略と国家のゆくえ―(原書房)、共著『自衛隊は尖閣諸島をどう戦うか』(祥伝社)がある他、メディアへの出演多数。