トランプ氏の韓国批判、同盟に亀裂も 北朝鮮の思うつぼ

米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)政権と韓国の間に隙間風が吹いている。トランプ大統領が韓国の文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-In)大統領の対北朝鮮融和策などを批判しているほか、米韓自由貿易協定(FTA)の破棄もちらつかせているからだ。こうした言動は北朝鮮の思うつぼとなっており、専門家からは米韓同盟を弱体化させかねないと危惧する声も上がっている。

 北朝鮮は3日、水爆実験と主張する核実験を強行し、世界を震撼(しんかん)させた。だが、トランプ氏が文氏と協議したのはそれから1日半近くたった後だった。その間に、トランプ氏は日本の安倍晋三(Shinzo Abe)首相とは2回の電話会談を行っていた。

 北朝鮮の核実験から数時間後、トランプ氏はツイッター(Twitter)に北朝鮮を非難するツイートを連続投稿。ただ同時に「私が言っていたように、韓国も北朝鮮との融和に向けた話し合いがうまくいかないことに気づきつつある。彼ら(北朝鮮)に理解できるのは一つだけだ」と、韓国にも批判の矛先を向けた。

 トランプ氏はこれに先立つ2日、米国は韓国とのFTAからの離脱を検討していると明らかにしていた。2012年に発効した米韓FTAは、70年近く安全保障上の同盟国である両国の関係を下支えするような経済協定と専門家から評されている。

 トランプ氏が突如繰り出した韓国批判は多くの人をあぜんとさせ、識者からは同氏の無節操なツイートは危機的な現在の状況を悪化させるとの懸念も出ている。

■文氏は第2のチェンバレン?

 ソウル(Seoul)にある延世大学(Yonsei University)のジョン・ドルーリー(John Delury)氏は、トランプ氏は文氏を英国のネビル・チェンバレン(Neville Chamberlain)元首相のような存在になぞらえているとの見方を示す。チェンバレンは第2次世界大戦(World War II)前、当時の英国首相として、ナチス・ドイツ(Nazi)の指導者アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の欧州での領土要求を満足させようとした人物だ。

「トランプ氏はパートナーの韓国大統領を公然と攻撃する気になるくらい、韓国との関係を極めて軽視している」(ドルーリー氏)

 米国にとって韓国との同盟は、中国が影響力を強め、北朝鮮が兵器開発を急速に進展させるアジアに関する地政学的戦略の重要な柱の一つだ。

 しかし、トランプ氏は安倍首相と協議したほか、中国についてはツイッターに「努力はしているがほとんど成功していない」と書き込んだ。「韓国が序列の最下位なのは明白」だとドルーリー氏は指摘している。

 米シンクタンク、アメリカ進歩センター(CAP)のアダム・マウント(Adam Mount)上級研究員は「トランプ氏の貿易に関する見方、交渉、政策の非一貫性、脅し、その他の侮辱は、米韓同盟を破壊している」と警鐘を鳴らしている。