ネタバレサイト 摘発影響? 閉鎖相次ぐ

人気漫画雑誌の販売前に掲載作品の複写画像をインターネット上に掲載する「ネタバレサイト」の閉鎖が相次いでいる。熊本県警などが9月に“2大ネタバレサイト”の運営者らを著作権法違反容疑で摘発した影響とみられるが、いち早く作品を読みたい読者心理につけ込んで運営を続ける同種サイトの人気は根強い。専門家は「著作権者がネタバレサイトの運営者に高額の損害賠償請求訴訟を起こすなど、従来以上に厳正に対処する必要がある」と指摘する。

 県警などによると、摘発されたサイトでは運営者から月給十数万円で雇われた「書籍バイヤー」が、通常より早く雑誌が並ぶ東京都内の「早売り店」で「週刊少年ジャンプ」や「週刊ヤングジャンプ」などを購入。人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」や「東京喰種(トーキョーグール):re」などの画像をスキャナーで複写し、画像をサイトに掲載していた。

 作品全体は掲載せず、イラストの一部だけを使って残りは文字で表現するなど著作権者や捜査当局を刺激しないための“摘発逃れ”とも受け取れる加工をしていた。それでも多くの閲覧者が殺到。サイト内の広告表示回数は多い月で2億4553万回、このうち141万回がクリックされており、ともに出版元の集英社より多かった時期もあったという。

 同種サイトは約10年前から増え始めたが、著作権者である作者や出版社が告訴しなかったため長年摘発を逃れてきた。サイトが多くて告訴してもきりがない側面があったとみられるが、県警などは広告収入として少なくとも3億7900万円の広告収入を荒稼ぎするなど悪質さが目立つ“2大ネタバレサイト”に注目。昨春から捜査に着手し、文化庁や出版社、作者と連携して今年9月にサイト運営者ら5人を逮捕した。

 その後は摘発を警戒してか同種サイトの閉鎖が相次ぐが、運営を続けるサイトもある。福岡市の男性会社員(30)は「無料で次回の内容が分かる二つのサイトはよく見ていた。同じようなサイトがあれば見てしまう」と話す。京都精華大学マンガ学部の中野晴行客員教授(マンガ産業論)は「出版社や作者が訴訟を起こすなど厳しい対応を取らなければ同種サイトがなくなることはなく、警察の摘発とのいたちごっこが続くだろう」と警鐘を鳴らす。

 ◇早売りにも規制なし

 ネタバレサイトの著作権法違反事件でクローズアップされたのは、通常の発売日よりも早く漫画雑誌が店頭に並ぶ“早売り店”の存在だ。

 関係者によると、漫画雑誌は大手の取次店から2次卸を通じて書店などで販売されているが、2次卸から小規模な小売店に流れる過程で早売りする店が出てくる。以前から酒屋やガソリンスタンドなどの一部店舗が利益を得るために早売りをしているケースがあるという。業界団体でつくる「雑誌発売日励行本部委員会」が販売日を守るよう取り決めているが、早売りに明確な法的規制がないため大きな問題になっていないのが現状だ。