流行語大賞ノミネート30語 なぜ「このハゲーッ!」は選ばれなかったのか 事務局に聞いた

年末恒例「現代用語の基礎知識選 2017ユーキャン新語・流行語大賞」の候補30語が発表された。

 その1つに、豊田真由子元衆院議員(43)が当時の秘書に発した「ちーがーうーだーろー!」が選ばれた。インターネット上の意見を見ると、豊田元議員なら「このハゲーッ!」のほうが選ばれると予想していた人が多かったようだ。選定の理由について、同賞の事務局に聞いた。

ネット民は「なぜ、こっち?」

 その年に話題となった言葉に贈られる「流行語大賞」は、1984年に始まった。現在の選考委員は次の5人。

 ・東京大名誉教授の姜尚中(かん・さんじゅん)さん

 ・歌人の俵万智さん

 ・女優の室井滋さん

 ・漫画家のやくみつるさん

 ・「現代用語の基礎知識」編集部長の清水均さん

 昨年の大賞は「神ってる」で、プロ野球・広島東洋カープの緒方孝市監督と鈴木誠也選手が受賞した。

 「ちーがーうーだーろー!」「このハゲーッ!」「バカかお前は!」

 豊田元議員の秘書に対する一連の暴言や暴行疑惑は、6月下旬の週刊新潮の報道で明るみに出た。音声データも公開され、ミュージカル調の鼻歌で秘書を問い詰めるなどする様子が、連日テレビの情報番組などで放送された。

 中でもインパクトの点では、「このハゲーッ!」が多くの人の記憶に残ったようだ。

 「『ちーがーうーだーろー!』は違う気がする」「なんで『このハゲーッ!』じゃないの?」「ハゲの人への忖度(そんたく)があったのでは」などと、11月9日の候補30語が発表後、ツイッターをにぎわわせているのだ。

 30語は、「現代用語の基礎知識」を発行している自由国民社と大賞事務局が選んでいる。

流行語としては…

 「テレビでは確かに、この言葉(『このハゲーッ!』)がさかんに流され、多くの人が知っていると思います。ただ、だからといって『流行語』として選ぶことが正しいかといえば、それは全く別の話です」

 事務局の担当者は、そう話す。

 「性別や年齢に関係なく、人の外見をあのように揶揄する言葉は公共の場で使われるべきではないと思います。あの音声データを、連日にわたりテレビが放送したこと自体、『違うだろ』なのではないでしょうか」とも。

 ただし、豊田元議員の一連の発言が「多くの人の話題に上ったのは事実」と認識。事務局は豊田元議員の発言の中から別の「ちーがーうーだーろー!」を候補に挙げたようだ。

 今年の大賞およびトップテンは、12月1日に発表される。(文化部 本間英士)

次ページにノミネート30語の一覧掲載

2017年ユーキャン新語・流行語のノミネート30語(五十音順)

 アウフヘーベン(「止揚」。小池百合子都知事が多用したカタカナ語の1つ。「文藝春秋(7月号)」での築地市場移転問題に触れた手記などに登場。6月9日の定例会見で本人が説明している。関連記事は)

 インスタ映え(画像共有アプリ「インスタグラム」人気が定着。利用者はインスタグラムで映える、すなわちインスタ映えする写真を撮ることに熱中。関連記事は)

 うつヌケ(ミュージシャン、大規ケンヂさんや思想家、内田樹(うちだ・たつる)さんらのうつからの脱出を描き、共感を呼んだ田中圭一さんの同名漫画。関連記事は

 うんこ漢字ドリル(例文のすべてに「うんこ」を用いた漢字ドリル。関連記事は)

 炎上○○(企業や自治体のPR動画で炎上が相次いだ。炎上はインターネット上で批判を集めること。関連記事は)

 AIスピーカー(クラウド型のAI(人工知能)を搭載し、話しかけることで家電などが操作できるスピーカー。米グーグル、米アマゾンなどがこぞって投入。関連記事は)

 9.98(10秒の壁)(東洋大の桐生祥秀選手が、福井で行われた日本学生対校選手権男子100メートル決勝で、日本人としてはじめて10秒の壁を破った。関連記事は)

 共謀罪(共謀罪の構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が成立、施行された。一部メディアは、戦前の治安維持法を引き合いに「内心の自由を脅かす」といった批判を繰り返した。同賞の選考理由も、「国民の賛同を得やすくするため、当初は条文の文言に入ってすらいなかった『テロ』を用いた名称に切り替え、『テロ等準備罪』として、委員会採決を省いて本会議での採決」と、やや批判的な見地。関連記事は)

 GINZA SIX(東京・銀座の再開発が盛んな中で、松坂屋の看板を下ろし脱百貨店を目指したビジネスモデルとして注目される商業施設。関連記事は)

 空前絶後の(ブレークした芸人、サンシャイン池崎さんの「空前絶後の超絶孤高のピン芸人!」という自己紹介から)

 けものフレンズ(ヒットした同名アニメ。関連記事は)

 35億(女性芸人、ブルゾンちえみさんの決めぜりふ。「地球上に男は何人いると思っているの?」を前振りに発する。関連記事は)

 Jアラート(全国瞬時警報システムの通称。関連記事は)

 人生100年時代(政府は、安倍晋三政権の新たな看板政策「人づくり革命」を議論する有識者会議を「人生100年時代構想会議」とした。関連記事は)

 睡眠負債(睡眠不足が蓄積されていく現象。関連記事は)

 線状降水帯(積乱雲が一直線に連なる。集中豪雨の6割はこの現象が原因で起きているが、メカニズムはよく分かっておらず予測が難しい。関連記事は)

 忖度(そんたく)(ネット上の辞書の検索ランキングで3月中旬から約4カ月間首位に。関連記事は)

 ちーがーうーだーろー!(関連記事は)

 刀剣乱舞(刀剣を擬人化した男性キャラクターを育てる、女性に人気のゲームのタイトル。パソコン版が出て、その後スマートフォンアプリ「刀剣乱舞 Pocket」が出ている)

 働き方改革(昨年8月に働き方改革担当相を設置。過労死の問題もクローズアップされている。関連記事は)

 ハンドスピナー(指の上で回転させるだけの玩具。米国でヒットして日本上陸。関連記事は)

 ひふみん(引退した将棋の加藤一二三九段。藤井聡太四段のデビュー戦の対局相手として新旧天才として注目。愛らしいキャラクターで、タレントとして活躍中。関連記事は)

 フェイクニュース(ネット上でニュース然として流布される噂やでっち上げ。関連記事は)

 藤井フィーバー(中学生棋士、藤井聡太四段が連勝記録でわかせた。関連記事は)

 プレミアムフライデー(政府と経済界が提唱した個人消費喚起キャンペーン。月末の金曜日に早めの退社を促したが、効果はほとんど得られていない。関連記事は)

 ポスト真実(客観的な事実よりも持論にフィットした感情的な意見だけを事実と見なし、その判断が世論を形成するさま。関連記事は)

 魔の2回生(不祥事が続いた自民党の二回生議員。関連記事は)

 ○○ファースト(ドナルド・トランプ米大統領の「アメリカ・ファースト」、小池百合子都知事の「都民ファースト」などで使われたフレーズ)

 ユーチューバー(動画共有サイト「ユーチューブ」で人気を集め、高額の広告収入を得て生計を立てている人たち。関連記事は)

 ワンオペ育児(母親が1人で育児をするさま。関連記事は)

 現代用語の基礎知識選 2017ユーキャン新語・流行語大賞 1年の間に広く関心を集めた新語・流行語を選ぶことを目的として1984年に創設。2003年から自由国民社と出版事業の提携をした通信教育のユーキャンが協賛している。

 新語・流行語は、まず「現代用語の基礎知識」に収録される用語の中から、自由国民社と同社が外部委託している大賞事務局が候補として30語を選び出す。

 次いで有識者らで構成される選考委員会がトップテンと大賞を決める。

 その年の世相を反映する指標の1つとして存在感を発揮し続けている一方、2015年の「アベ政治を許さない」や昨年の「保育園落ちた日本死ね」(いずれも大賞ではなくトップテン)など、「政治的である」と選考に疑義を呈する声が挙がったことも。