神戸の老人施設で入所者死亡 「事件性低い」一転、監察医解剖で骨折判明で立件へ

神戸市垂水区の有料老人ホームで今年1月、80代の女性が亡くなり、兵庫県警は「事件性が低い」と判断していたが、県監察医の解剖結果を受け、業務上過失傷害の疑いで30代の女性職員を書類送検する方針を固めたことが24日、分かった。入浴介護中に寝具から落下して腰の骨を折る重傷を負っていたといい、職員が必要な措置を取っていなかった疑いが判明。事件は全国で廃止が相次ぐ監察医制度の役割を巡っても関心を呼びそうだ。

捜査関係者らによると、1月14日午後10時半ごろ、市内の病院が「老人ホームから運び込まれた女性が死亡した」と垂水署に連絡。駆け付けた署員が検視したところ、目立った外傷がなかったことなどから「事件性は低い」と判断。死因が不明の「異状死」として監察医が行政解剖を実施したという。

 解剖の結果、女性は腰の骨を折る大けがをしていたことが判明。死因は不整脈で、けがの影響は分からなかったが、県警は施設側に事故を起こした責任があるとみて捜査を始めた。

 調べによると、職員は同日夕、寝たきりの女性を電動ストレッチャーに乗せて移動させる際、体を固定するベルトを女性に装着せず、約65センチ下の床に落下させた疑いが持たれている。

 職員は「女性を入浴させた後、浴室の清掃状況を確認しようと目を離した際に落ちた」などと説明。事故後は施設の部屋で寝かせ、約6時間後に容体が急変した。遺族は寛大な処分を求めているという。

 県などによると、神戸の監察医制度は、事件性なしと判断された死体でも、異状死はすべて監察医が行政解剖・検案を実施する。今回のように行政解剖の結果から事件が摘発されるケースは少ないが、解剖中に事件性が浮上し、司法解剖に切り替えられるケースは毎年数件あるという。

 一方、監察医制度の適用を受けない姫路や豊岡市などでは、警察医が検視して事件性がないと判断すると大半は解剖されず、死因究明を巡る地域差が問題となっている。