結婚で認知症リスク低減か、研究

結婚生活は何かと大変なことも多いが、パートナーと共に年を重ねることで、認知症リスクが低減する可能性があるとした研究論文が28日、医学誌「神経学・神経外科学・精神医学ジャーナル(Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry)」に掲載された。

80万人以上のデータを対象とした今回の研究によると、生涯独身の人は、アルツハイマー病やその他の認知症にかかるリスクが約40%高くなっていることが分かったという。また長い同居生活の後に独り身となった場合も約20%のリスク上昇が見られた。

研究はロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London、UCL)の研究者アンドリュー・ゾンメルラード(Andrew Sommerlad)精神科医らによるもの。研究では、正式に結婚せずに一緒に暮らしているカップルについても結婚しているものとみなされた。

興味深いことに、離婚経験を持つ高齢者では、認知症リスクが既婚カップルと同等レベルにとどまっていることが研究では確認された。

結婚と認知症との関係を探るために、ゾンメルラード氏と研究チームは先行研究15件、計12か国の81万2000人分のデータを調べた。

多くはスウェーデン人のデータだったが、フランス人、ドイツ人、中国人、日本人、米国人、ブラジル人などのデータも少なくなかった。驚きだったのは、各文化を通じて結果にばらつきがほとんど見られなかったことだという。

今回行われたのは観察研究だったため因果関係をしっかりと示すことはできないが、導き出された結果は、相互に整合性のある少なくとも3つの説明を示唆するものとなった。

■パートナーとの生活がもたらすライフスタイル 結婚で認知症リスク低減

1つ目は、結婚そのものが危険を減らすのではなく、パートナーと一緒の生活がもたらすライフスタイルがその要因だと考えられるということ。ゾンメルラード氏は「健康な体、食事、運動、といったよりヘルシーなライフスタイルだけでなく、話し相手となるパートナーを持つことによる社会的な刺激」もこれには含まれるとしている。

2つ目は、生涯のパートナーを失うことによる極端なストレスが、主に記憶や学習、感情を司る海馬のニューロンに大きな影響を与えるということ。「相手に先立たれた人では認知症リスクが高く、離婚した人では変化がほぼないことがこれで説明できる」

そして最後は、認知症リスクがその他の内在する認知および性格の特性と関連している可能性があるということ。とりわけ結婚が一般的な社会規範となっている場合、柔軟な思考やコミュニケーションに難がある個人では認知的予備力が低く(よって認知症リスクが高く)、自ずと結婚機会が少なくなっているということが考えられるというのだ。

同じ年齢でも、年代の異なる独身者間にみられる認知症リスクの大きな違いがこのことを裏付けている。1900〜1925年に生まれた独身者では認知症にかかるリスクが40%高かったが、より近年では同年齢の独身者でも同24%にとどまっていた。