燃油高騰 施設園芸の経営直撃 加温期迎え 戦々恐々

燃油価格が高騰していることを受け、加温シーズンを迎えた施設栽培農家が警戒感を強めている。一部の農家は、10年前の燃油高騰でヒートポンプに切り替えるなどの対策を取っているところもあるものの、A重油や灯油を使っている農家も多い。特に農家の生活に直結するガソリンや冬季に需要が本格化する灯油の価格も上がれば、農産物価格が伸び悩む中で、経営を直撃する可能性もある。

燃油高騰 負担増数千万円か 北海道

極寒の北海道では施設園芸だけでなく、住宅や事務所、畜舎などあらゆる施設で暖房が使われることから、特に燃油代の上昇は影響が大きい。施設栽培で葉物野菜を中心に通年出荷する、札幌市のアド・ワン・ファームの山口敏樹専務は「経費の負担増は計り知れない」と先行き不安な現状を語る。

 同社ではビニールハウス約3ヘクタールを灯油ボイラーで加温し、ハーブ類や小松菜、レタス、ミツバなどを栽培する。

 北海道庁の調査によると、道内の灯油価格は今年10月が1リットル75・6円と、前年同月より2割以上高かった。同社の2016年の灯油使用量は約500キロリットルで、既に昨年から1リットル10円以上値上がりしており、単純計算で500万円以上の灯油代が増える計算だ。

 ハウスは内張りカーテンで三、四重に被覆し、循環扇も置き保温対策は万全だ。ただ、氷点下10度近くに冷え込む真冬でも、5〜10度の温度を保たなければならない。

 今年は冷え込みが早く、前年より2週間前倒しとなる11月15日ごろから加温を始めただけに「灯油の価格がこのまま5、6年前の高騰時の水準まで上昇すると、数千万円単位の負担になるかもしれない」と不安をあらわにする。

 今後も、価格上昇が続けば、日射量の多い日に加温を強め、光合成が進みにくい曇りの日には加温を少なくするなど、集中的に加温し、燃油代を節約する計画だ。

燃油高騰 コスト高が心配 愛知

施設園芸産地の愛知県東三河地域では、5、6年前の燃油高騰時にコスト削減策として、ヒートポンプや温風機の導入を進めた農家も多い。愛知県田原市の菊農家は「東海地域はまだそれほど寒さが厳しくなく、寒冷地と比べて、コスト面の影響は現段階では、まだ少ないだろう」と話す。

 一方、同西尾市のイチゴ農家はまだ加温を始めていないが「5、6年前の水準だとコスト面で厳しくなる」と懸念する。灯油やガソリンなどは生活に不可欠で、特に灯油はこれからが需要期となることから、価格上昇が続けば、農家経営を圧迫しかねない。

灯油価格10週連続高騰 先行きは不透明

資源エネルギー庁が公表した11月20日時点の灯油店頭価格は1リットル82・4円と、10週連続で値上がりした。直近で最安値だった2016年3月(同61円)より35%高い。レギュラーガソリン価格は全国平均で1リットル140・10円と、15年8月10日調査以来、2年3カ月ぶりに140円に乗せた。農業用ハウスの暖房や漁船の燃料などに使われるA重油も値上がりが続いている。9月の業者取引価格は1リットル58・3円で、16年3月(同44・4円)から31%上昇している。

 エネルギー問題を研究する日本エネルギー経済研究所によると、石油輸出国機構(OPEC)加盟国やロシアなど産油国の減産を背景に、原油価格の上昇傾向が続いている。こうした原油の動向と灯油、A重油の価格は連動しており、今後の値動きは産油国の減産姿勢や主産地の中東情勢によって変わり、先行きは不透明という。