デトロイト財政破綻 人口減り荒廃 治安悪化
米中西部ミシガン州デトロイト市が18日に連邦破産法9条を申請し、過去最大の自治体の財政破綻に陥った。「自動車の街」として発展したが、人口流出で荒廃が進み、治安悪化も著しい。同市は裁判所の管理下で再生を図るが、住民は期待と不安のはざまで暮らしている。09年の経営破綻から復活を遂げつつある米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)の本社ビルがそびえる市中心部。そこから10分も歩くと街の風景は一変する。放置された民家や工場、ホテルが廃虚と化していた。
通勤中のテリー・ジョーンズさん(46)が吐き捨てるように言った。「この光景を見れば分かるだろう。みんな出て行き、全てが貧しくなった」
デトロイトは1900年代初頭から、GMやフォード・モーターなどの自動車産業とともに米国を象徴する都市に成長。同市を発祥とする「モータウン・サウンド」と呼ばれる音楽が60〜70年代に世界的に大流行する文化の拠点にもなった。
しかし、日本車の攻勢などで60年ごろから衰退が始まり、工場の閉鎖や移転が相次いだ。人口は50年の180万人超から現在の約70万人に激減した。
市東部には、50年以上前に閉鎖された約32万平方メートルもの自動車工場跡が広がる。内部はがれきの山で、5階建てほどの建物が今にも崩落しそうだ。周辺に廃屋が広がり、建築関連業のエリック・ジョンソンさん(49)は治安悪化を懸念する。「若者に暴力がはびこり極めて危険な状況だ」
デトロイト市の2013年初めから7月中旬までの殺人事件の発生件数は167件で、人口規模が10倍以上のニューヨーク市(170件)とほぼ同水準。財政悪化で行政サービスは低下し、パトカーが現場に到着するのに要する時間は平均58分と、全国平均の11分を大幅に上回る。
「今こそ60年にわたる衰退を止める好機だ」。ミシガン州のスナイダー知事は、市民サービス改善には裁判所の管理下で債務整理などを進め、再生を図ることが不可欠だと強調する。ジョンソンさんは「昔のような美しい街に戻れるはず」と期待する。
ただ、その道のりは険しそうだ。120年超の歴史を誇るデトロイト美術館では、市が保有するゴッホの自画像などの収蔵品を債務返済のために売却するとの話が取りざたされる。案内のボランティア男性(72)は「売却の話は聞いたが、なんとも言いようがない」と言葉少なだった。