IS脅威、世界に拡散=中央アジアへ戦闘員流入か−欧州で共鳴者のテロ続発
過激派組織「イスラム国」(IS)の活動拠点だったイラク北部モスルが奪還され、IS掃討作戦は一定の成果を挙げた。しかし、ISの過激思想は欧州やアジアなど世界各地に拡散。組織としてのISが弱体化しても、戦闘員や共鳴者が世界各地でテロを起こす可能性は高く、「テロとの戦い」に終止符を打てる日はまだ遠い。◇アフガン経由で流入か
今後、IS残党の流入が懸念されるのが中央アジア諸国だ。南方のアフガニスタンではISが勢力を拡大させており、ロシアのプーチン大統領は「ISが中央アジアとロシア南部を不安定化させる新たな計画を練っているという情報がある」と指摘。「アフガンを拠点とするテロリストがわれわれの国々で活動しようとしている」と強い懸念を示した。
中央アジアは強権的な国家が多く、貧富の差も大きい。貧困にあえぐ若者を狙い、イスラム過激派が勧誘を行ってきた。中央アジア諸国からは約5000人がISに参加したとみられ、イラクで行き場を失った戦闘員が帰還すれば大きな脅威となる。ロシア・サンクトペテルブルクで4月に起きた地下鉄爆破テロの実行犯はキルギス出身で、シリアでISの訓練を受けた可能性があると報じられている。
東南アジアでもISが拠点を設ける動きが出ている。イスラム教徒が世界最多のインドネシアでIS支持者によるテロが頻発しているほか、政情不安に悩まされているフィリピン南部でもISの活動が活発化している。
◇対テロ戦「新たな始まり」
欧州では、ISの共鳴者によるとされるテロ事件が続発している。英国では3月以降、テロ事件が4件発生し、30人以上が死亡。そのうち3件について、ISが犯行声明を出し「(対IS)有志連合参加国の人々を標的にした」などと主張した。近年、イスラム過激主義に心酔した青年たちによるテロが相次いでいるフランスでも、パリのシャンゼリゼ通りで4月、銃撃テロで警官1人が死亡した。
IS情勢に詳しいアラブ系イスラエル人の政治・軍事アナリスト、ラフェア・アブタリフ氏は、ISの支配地域や財源が縮小する中、「(ISは)旧来の『国家』戦略でなく、自分たちの思想を欧州をはじめ世界中に広げる新戦略に転換しつつある」と指摘。「テロとの戦いは終わるどころか、新たな始まりを迎えるだろう」と語った。