イラク IS戦闘員、山間部に移動か 勢力立て直し模索

過激派組織「イスラム国」(IS)のイラクの最大拠点だった北部モスルの解放をアバディ首相が9日に宣言しIS掃討作戦が大きな進展を見せる中、既に数百人のIS戦闘員がモスルから約200キロ南のクルド人自治区領内も含む山間部に移動し、勢力の立て直しを模索していることが分かった。クルド自治政府関係者が毎日新聞の取材に明らかにした。モスルのIS要員は大半が殺害されたとみられるが、一部は脱出して別の戦闘員グループと合流し、新たな拠点を各地で作る動きがあるという。

戦闘員が集まっているのは、クルド人自治区とイラク政府管轄エリアの境界に位置するハムリン山地。2014年のIS「建国」後、一時はイラク軍などの攻撃で山地から撤退したが再集結しつつあるという。クルド自治政府関係者によると、最近になってイラク政府側とクルド側の当局者が連絡を取り合い、掃討作戦について協議を開始した。

 ISはモスルの南約120キロに位置するハウィジャや、モスルの西約50キロのタルアファルなど複数の都市で一定の勢力を維持しており、今回の山岳地帯での拠点作りの動きもその一環とみられる。

 自治政府関係者は「ハウィジャなどの都市部はモスル同様に掃討作戦が可能だが、山岳地帯に逃げ込まれた場合、完全な排除は困難になる」と話す。ハムリン山地のIS戦闘員は最近、クルド自治政府の治安部隊ペシュメルガに迫撃砲を撃ち込むなどの攻撃に出ているという。

 ハムリン山地は03年のイラク戦争後の混乱でイラク政府の統治が完全には及ばず、国際テロ組織アルカイダも一時、拠点の一つにしていたという。