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中国で勝ち抜くサイゼリヤ、消費者は日本式ファミレスの何を支持しているのか=中国報道

中国で勝ち抜くサイゼリヤ、消費者は日本式ファミレスの何を支持しているのか=中国報道

経済成長に伴い、中間所得層の拡大が続いている中国。今後も成長が期待できる有望市場として、世界各国の企業が中国に進出しているが、それだけに競争は熾烈であり、中国で成功を収めるのは容易なことではない。

 中国で競争が激しい産業の1つが外食産業だ。マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、ピザハットなどの世界の大手外食チェーンのほか、中国人消費者の好みを知り尽くしている中国の外食チェーンなど、多くの企業がしのぎを削っているわけだが、同市場で日本企業として大きな成功を収めているのがイタリアンレストランチェーンの「サイゼリヤ」だ。

 中国メディアの今日頭条はこのほど、サイゼリヤの中国市場における強さを考察する記事を掲載し、サイゼリヤは「コストパフォーマンス」の高さを武器に中国人消費者の支持を勝ち取っていると伝えている。

 中国では何らかの消費行動の際に「性価比」を重視する人が多い。「性価比」とは日本語でコストパフォーマンスの意味で、モノであれば価格以上の機能があるかどうか、サービスであれば価格以上の質かどうか、食事であれば価格以上の美味しさ、量であるかどうかを消費の判断基準とする傾向にある。

 記事は、サイゼリヤのメニューはいずれも10ー30元(約171ー510円)ほどの安さであり、中国では一般的に高額商品と認識されているビーフステーキのようなメニューであってもこの価格の範囲内で提供されていると紹介。「味は一口で冷凍された料理を加熱したものであることがわかる」としながらも、ドリンクバーのシステムもあって「お得感がいっぱい」になると指摘した。

 さらに、サイゼリヤが中国でも「イタリアンを安価で提供する」という原則を貫き、価格とサービス水準、そして味を保証するために直営店方式で事業を運営していることを指摘。中国ではピザハットも人気だが、サイゼリヤはピザハットのなんと半額ほどの値段でお腹いっぱいになるまで食事ができると伝え、これが「価格に敏感な中間層」の支持を得ていると紹介し、中国の店舗では中年女性や家族連れで賑わっていることを伝えている。

中国で日本のファミレス死屍累々の中、サイゼリヤ一人勝ちの理由

中国で日本のファミレス死屍累々の中、サイゼリヤ一人勝ちの理由


日本の外食産業は、成長する中国市場に積極果敢に進出している半面、苦戦を強いられて撤退を余儀なくされる企業も少なくない。特に、日本の代表的な外食産業の業態であるファミレスはほとんど定着できず、まさに「死屍累々」の状態にある。そんな中、なぜか「サイゼリヤ」だけは成功を収めている。その理由とは。(ゼロイチ・フード・ラボCEO 藤岡久士)

 「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌を遂げ、人口13億8000万人を抱える巨大市場中国――。

 そのポテンシャルと魅力はあるものの、厳しい中国市場で勝ち残ることが容易でないことは、既に皆の知るところとなっている。この市場に対し、近年、果敢にチャレンジしたのが、人口減少により国内市場がシュリンクしている外食産業企業である。

 進出から十数年の月日が経ち、既に多くの企業が事業を軌道に乗せることができず撤退に追い込まれているが、中でも全く市場に切り込むことができなかったジャンルがある。

 それがファミリーレストラン、「ファミレス」業態である。

 日本では外食産業といえば、誰もが思い浮かべる代表的な業態だが、なぜ中国で「ファミレス」は市場を切り開くことができなかったのだろうか。

日本国内で低迷し中国市場に 進出したファミレスの歴史 サイゼリヤ一人勝ちの理由

「ファミレス」という言葉の語源をたどると、1970年「すかいらーく」の1号店創業にたどりつく。

 一般的に、「ファミレス」とは、セントラルキッチン(一次加工工場)で、原材料を半加工することにより、バラエティに富んだメニューを、スピーディーかつ、リーズナブルに提供することを実現したレストランのことを指す。

 当時の「ファミレス」は、母親たちを家事から解放し、父親たちに家族とのコミュニュケーションの機会を提供した。

 そして、何より子どもたちに「ハンバーグ」や「ピザ」をはじめとした、大好きな洋食を家族みんなで食べる機会を提供し、当時はまさに「夢のような空間」であった。

 筆者自身、子どもの頃両親に連れられ「ファミレス」に行くと、一つのテーブルにさまざまな料理が並ぶ、その「ハレ感」に無性に興奮したことを覚えている。

 1980年代に入ると、「ファミレス」は24時間営業へと進化し、これまでの家族連れの客層に加え、若者たちをも取り込み、さらなる繁栄を極めていった。

 その「ファミレス」をめぐる環境が変わったのは、1990年代に入ってからだ。

 バブルが崩壊し、価格破壊の波が「ファミレス」業界にも波及した結果、「ハレ」の場であった「ファミレス」は、日常「ケ」の場となり、結果、それまでの輝きを失うことになる。

 国内で低迷していた「ファミレス」が、海外に新たな活路を見出していったことは、ある意味必然なことだったのかもしれない。

 2000年代に入り、改革解放が進んだ中国で、外食は「レジャー」であり、「ハレ」の場であった。その様子は、日本の70年代、80年代を彷彿させ、今後、大きなムーブメントが起こることを多くの市場関係者が期待した。

 事実、当時は「ピザハット」や「味千ラーメン」といった外国料理のレストランに、連日一時間以上の行列ができ、それが当たり前の光景として定着していた。その様子を見る限り、日本の「ファミレス」には、間違いなく勝機があると誰もが確信していた。

そこで、「ココス」、「ジョイフル」、「ロイヤルホスト」、「デニーズ」(中国店名称・オールデイズ)といった大手ファミレスチェーンが、沿岸部の大都市を中心に本格的に進出を果たし行くこととなる。

日本のファミレスが ことごとく失敗した理由 サイゼリヤ一人勝ちの理由

では、なぜ進出した日本のファミレスチェーンは、その果実を手にすることができなかったのだろうか。その理由を分析してみる。

 (1)キラーコンテンツが刺さらなかった

 「ファミレス」の人気No.1メニューといえば「ハンバーグ」である。刺さらなかった理由は、味や食感に問題があるわけではない。

 中国でも「マクドナルド」などアメリカの大手ハンバーガーチェーンは既に展開していたし、中華料理には「獅子頭」という肉団子も存在していた。

 問題は、何の肉か、鮮度が良いのか悪いのかわからないという、中国独特の「挽肉」の特性とポジショニングにあったのだ。

 食の安全対策がだいぶ進んだ現在でも、中国人の多くは、いまだ挽肉に対しネガティブなイメージを持っている。

 中国で、「ハンバーグ」は商品価値が低く、たとえ美味しくとも「ハレ」の外食の場で選ばれない商品なのである。

 (2)主食中心のメニュー構成が習慣にそぐわなかった

 「オムライス」や「ドリア」、「ピザ」に「スパゲッティー」。日本人にとって、一見バラエティーに富んだメニュー構成も、中国人にとっては「主食」のオンパレードにしか見て取れない。

 「冷菜」、肉や魚、野菜を加熱した「熱菜」をバランスよく注文し、その補足として「主食」を加える中国人にとって、主食しかない「ファミレス」のメニューは習慣にそぐわない、使いにくい店舗であった。

 すなわち、中国人にとって“炭水化物祭り”の「ファミレス」のメニューは、腹を満たすためのメニューにしか映らず、結果、単に“割高な食堂”としてのポジションに甘んじてしまったのである。

 (3)食のトレンドに合わなかった

 市場開放により、多くの新しい食文化が持ち込まれ多様化が一気に進んだ中国だが、そもそも食文化とはかなりコンサバティブなものである。

 表向き、その市場と習慣は大きく変貌を遂げたように映ったのだが、実は皆が想像する以上に食の西洋化は進まなかったのだ。

 それを裏付けるように、中国の外食市場における外国料理のカテゴリー比率は1%にも満たないというデータがある。

 これは、日本のそれ(13〜14%)と比較しても、極端に少ない数字である。

 中華料理が常にさまざまな要素を受け入れ多様な進化を続けていることが、新たな食文化を容易に定着させない要因の一つになったことは、注目に値する現象と言える。

 すなわち、食の西洋化はそれほど進まなかったものの、中華料理の国際化が進んだのである。

成功している「ファミレス」もある 「サイゼリヤ」は人気 サイゼリヤ一人勝ちの理由

しかし、中国で全て「ファミレス」が撤退に追いやられていたわけではない。数少ない、成功を収めているチェーンの一つが「サイゼリヤ」である。

 では、多くのファミレスチェーンが撤退に追いやられる中、なぜ「サイゼリヤ」は成功することができたのだろうか。

 1.専門性の明瞭化

 一般的な「ファミレス」と「サイゼリヤ」の大きな違いは、そのコンセプトにある。

 カジュアルな洋食と和食をミックスしたメニューが一般的な「ファミレス」のそれだとすると、「サイゼリヤ」は価格こそ安価なものの、メニュー構成はイタリアンレストランだ。

 中国での「サイゼリヤ」のポジショニングは、まさにカジュアルなイタリアンレストランであって、「ファミレス」ではない。

 事実、日系であることを大きく謳っているわけではないため、顧客の多くは日本企業であることすら知らないのだ。

 2.価格戦略

 「サイゼリヤ」の成功要因として、絶対的な条件の一つが「価格戦略」であったといえる。

 「サイゼリヤ」が進出する前の中国は、洋食であれば何でも中華料理よりも割高なのが当たり前の世界であった。

 その常識を打ち破り、「サイゼリヤ」は、当時大人気だった「ピザハット」の半額以下で「ピザ」や「手羽先」が食べられるレストランとして地位を確立していった。

 結果、イタリアンは中国人にとっても手の出しやすい、より身近な料理となり、裾野が大きく広がった。

 このことは、「サイゼリヤ」の中国の食文化に対する大きな貢献だったと筆者は分析している。

 3.現地化

 飲食店の海外進出において、現地化は必要でありながら、かつデリケートな問題である。

 変えるべき点、変えてはいけない点を見極めるのは非常に難しく、味の現地化は、元々の料理の特徴を消してしまう可能性を抱える、諸刃の剣の側面を持ち合わせている。

 サイゼリヤの場合、ピザ生地に代表される、完全に現地の嗜好に合わせ対応したものがある一方、実は多くのメニューは日本のそれと、味も基準も変えていない。

 一部の日本人顧客からは、日本らしくないと揶揄される現地化したサービスも、従業員の離職率を抑え、中国での低価格を実現するための対策としては一定の評価ができる。

中国での外食市場に 「タイムマシン経営」は通用しない サイゼリヤ一人勝ちの理由

実際のところ、飲食店が上手くいくかいかないかは、「立地」「価格」「メニュー構成」「接客」「商品クオリティー」等、さまざまな複合的な要因によって決まり、簡単に分析できるものではない。

中国での出店であれば、進出の形態が「独資」か「合弁」か、それとも「フランチャイズチェーン(FC)」なのか。

 また、「合弁」あるいは「FC」の場合であれば、パートナー企業との信頼関係を構築することができたかどうかも、成功に向け大きな鍵になるため、それらを分析しようとすると、さらに複雑になる。

 すなわち、上手くいかなかった理由は、各社それぞれ個別にあることは、言うまでもない。

 しかし一方、俯瞰して分析を続けていくと、「ファミレス」という業態の特性が、中国のマーケットに合わなかったということも見て取ることができる。

 既に中国の外食市場は、日本での過去の成功事例の数年前を思い出しながらの「タイムマシン経営」が通用する時代ではない。

 今後、外食企業が中国で成功を収めるためには、単純に日本の業態を現地にアレンジするのではなく、現地マーケットに照準を合わせ、ゼロから業態を開発していくようなアプローチが、さらに重要となってきているように思える。
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