シリコンバレーのバブルの象徴「ジュースマシン」企業が事業停止

シリコンバレーのバブルの象徴と呼ばれたスタートアップ企業、Juiceroが事業を停止する──。Juiceroは400ドルのジュースプレスマシン(フレッシュジュースを絞る機械)を販売する企業。これまで1億ドル以上の資金を調達していたが、その価格が法外に高く、誇大宣伝を行っているとの批判を浴びていた。

「先月、当社はジュースマシンやジュースパックの価格を引き下げることをアナウンスしたが、単独での事業継続は困難であると判断した。今後のJuiceroのミッションを継続するにあたり、外部企業への売却の道を模索する」と、同社は公式サイトで告知した。

Juiceroは約1年半前に創業され、合計で約1億2000万ドル(約132億円)の資金を調達。2016年3月にはWi-Fiでネットにつながるジュースマシンを、1台700ドルでリリースしていた。同社はパック詰めのフレッシュジュースのサブスクリプションサービスも提供していた。

Juiceroのポテンシャルは一部から「フレッシュジュース界のテスラ」と評価されたが、嘲笑する声もあがっていた。700ドルという価格は法外に高いとの声もあったが、ビジネススケールの拡大につれて価格は下がるとの見通しだった。しかし、そのアイデアは実現には至らなかった。

Juiceroの創業時のCEOのダグ・エヴァンスは自身の試みをスティーブ・ジョブズの偉業に例えることもあった。その後、元コカコーラ社役員のジェフ・ダンが会社を引き継ぎ、Juiceroをメインストリームの企業にすると宣言した。その後、ジューサーの価格は400ドルに引き下げられ、実店舗での販売も開始した。

しかし、2017年4月にブルームバーグが、Juiceroのジュースパックは手で絞ることが可能で、高価なマシンなど不要だという記事を掲載したあたりから雲行きが怪しくなった。ネットにつながることが売りのジュースマシンは、無用の長物だという内容だった。

その後、世論の強い批判を浴びたJuiceroは、一部の顧客に対し返金を開始した。7月までに同社は人員の25%を解雇していた。創業から16ヶ月が経過した今、Juiceroは同社が掲げた米国人の暮らしに変化をもたらし、野菜や果物の摂取の仕方を変えるというゴールの達成が不可能であることを認めた。

サンフランシスコ本拠のJuiceroにはグーグルベンチャーズやKleiner Perkins、さらにはキャンベル・スープ・カンパニーも出資を行っていた。一部の熱狂的なジュース信者は「Juiceroのジュースは美味しい」と評価したが、「シリコンバレーのエリート専用のジュースマシン」と揶揄する声もあがっていた。