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男性ばかりの刑務所にたった一人拘留された女ギャングの末路

男性ばかりの刑務所にたった一人拘留された女ギャングの末路

平成14年、当時32歳の亜弓さん(仮名)は、ある人物に対する殺人未遂という重大な容疑で全国指名手配となった。盗難車で逃亡するも徳島県のホテルに落ち着いたところを捜査員に踏み込まれ逮捕される。徳島地裁で殺人未遂とは別件の覚せい剤使用の罪で実刑判決を受けた。その身柄は徳島刑務所内拘置区に移され、そこで引き続き取り調べを受けることとなった。しかしそこは重い刑を受けた凶悪犯ばかりが入る男性用の刑務所だった。

最凶の刑務所「LB級」とは 男性ばかりの刑務所にたった一人拘留された女ギャング

刑が確定した受刑者は法務省が指定する「処遇指標」によって、収監される刑務所が決められる。亜弓さんが拘置された徳島刑務所は「LB級」という指標にあたる。

〈処遇指標〉
A指標 犯罪傾向の進んでいない者
B指標 犯罪傾向の進んでいる者
W指標 女子
F指標 日本人と異なる処遇を必要とする外国人
I指標 禁錮受刑者
J指標 少年院への収容を必要としない少年
Jt指標 少年院への収容を必要とする16歳未満の少年
L指標 執行すべき刑期が10年以上である者
Y指標 可塑性に期待した矯正処遇を重点的に行うことが相当と認められる26歳未満の成人
M指標 精神上の疾病又は障害を有するため医療を主として行う刑事施設等に収容する必要があると認められる者
P指標 身体上の疾患又は障害を有するため医療を主として行う刑事施設等に収容する必要があると認められる者
D指標 拘留受刑者

「女子」で「初犯」であればWA、「外国人」で通訳などが必要な場合はF、などのように分けられ、その処遇に合った刑務所に収監されるわけだ。

そしてLB級となると……「刑期が10年以上」(中には無期懲役も)で、犯罪を繰り返してきたり、より悪質な犯罪で有罪を受けた「犯罪傾向の進んでいる」受刑者たちの刑務所、ということになる。

殺人やそれに近い犯罪に手を下してきた受刑者が当然多い。亜弓さんは自身が題材となったノンフィクション『組長の妻、はじめます。―女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録―』のなかで、中の様子をこう語っている。

「拘置区に行くと、女子刑務所とは違う一種異様な雰囲気がありました。これが男性のLB級刑務所かと改めて思い知らされました。とてつもなく威圧感を感じましたから(LB級刑務所は、しょーもない犯罪で初入(初めての刑務所入所者)のヘタレ男性受刑者なら、お漏らしするくらい怖いところですよ)」

 亜弓さんが殺人未遂を起こした相手は、実は警察官だった。その容疑で亜弓さんはこのLB級刑務所内で22回にわたる取り調べを受けた。

囚人たちに襲われる恐れも 男性ばかりの刑務所にたった一人拘留された女ギャング

「取調室がある処遇部屋に行くには刑務所内の運動場をぐるりと迂回して行かなくてはならないのです。ですから、LB級の男子受刑者ともすれ違います。
 そこで、私は、水戸黄門のご隠居のように刑務官に取り囲まれて移動しました」

「喧嘩では女に負けたことがない。酒では男に負けたことがない」と猛女ぶりを豪語する亜弓さんは、いくらなんでも大袈裟すぎると思い刑務官に不平を漏らすと、「以前、お前のように若くはないが、ここで女性刑務官が囚人に襲われたんや。自分の身が大事やったら、窮屈でも我慢せいや」と刑務官が言った。

「確かに、いつも受刑者の視線を感じましたし、彼らが運動などをしている時間に出くわしますと、彼らの視線が痛いほどでした。何より眼光の鋭さやイカツさが異様でした。そりゃあ、私もこの時は初入じゃありませんから、大拘(大阪拘置所)などで男性の被疑者を見ていますが、ここの住人は悪の貫録が違います。
『なるほど、この人らは何年も、ことによるとこの先一生女に触れることもないんやな。そりゃ、懲罰覚悟のハレンチ行為に及びたくなるのも仕方ないな』などと考え、生唾を飲み込み、水戸黄門に納得したものでした」
女子刑務所との違い
 女子刑務所入所経験のある亜弓さんにとっては、男子刑務所の食事でのご飯の量の多さや超ガッツリ系のメニューが驚きだったとか。また、女子向け食事では日常のデザートが無かったり、逆に運動会などの行事の際に出るお菓子の量が女子の5倍ほどだったことも印象深いという。

 女子トークがある程度許される女子刑務所とは違い、入所者との交流は一切なかったから、房にやってくるクモやヤモリに話しかけて退屈を紛らわせたとか。

 大阪の裏社会でその名を「知らない奴はモグリや」と囁かれたほど極悪だった亜弓さん。
「古今東西、我が国の女性の被疑者で男性のLB級施設に拘置されたり、グレーのナッパ服着せられ、被疑=被告=受刑者として刑務作業したのは、私くらいではないでしょうか」高級車窃盗団女ボスとして50人以上の手下を率いていたという亜弓さんをしても、LB級のイカツさには感じ入るところがあったということだろう。

前科12犯のホームレス 出所しても「うれしくない」

前科12犯のホームレス 出所しても「うれしくない」

刑務所を出た2日後に自転車を盗んだホームレスの男性(68)に京都地裁は先月、懲役2年2カ月の実刑判決を言い渡した。だが、男性は、刑務所に戻ることが苦にはならないと話す。自分を待つ人も行き場もなく、出所を喜んだこともないという。

 4月末の初公判。被告人質問に立つ女性検察官の口調は次第に厳しくなった。

 検察官「出所直後に自転車を盗んで、逮捕されると思わなかったんですか」

 男性「足が痛くて……」

 検察官「盗むしかなかったってこと?」

 男性「お金もなくて。どうしようもなかったです」

 背筋を伸ばして質問に答えてはいるが、積極的に反省の言葉が出てこない。

 男性はホームレス生活と刑務所暮らしを20年以上繰り返してきた。窃盗など前科は12犯。自転車を盗んだ罪で8カ月収容されていた神戸刑務所を3月6日に出所した。その2日後、東山区の路上で自転車を盗み、逮捕された。

 罪の意識はあったのか。京都拘置所で面会に応じた男性に尋ねた。「その瞬間は悪いとは思うけど……」と一瞬黙り、「家はなくても食べなきゃいけなくて」と続けた。刑務所で得た作業報奨金の5千円は、京都に戻る電車賃やラーメン代などに消えた。40代で離婚し家族も家もない。かつて過ごした鴨川の橋の下に行くほかなかった。

 出所2日後、午後から換金目的で空き缶拾いに出かけた。だが、この日に限って缶が少ない。買い取ってくれる店は午後6時に閉まる。焦って探し回るうちに、自分の自転車を見失った。足はパンパン。そんな時、無施錠の自転車を見つけた。何とか見つけ出した空き缶を載せて店へ。500円を手に入れた。

 お金が底をつくたびに、男性は空き缶拾いをしたり、アルミサッシなどを盗んだりしては換金し、生活してきた。50代のころ、区役所で生活保護を申請しようとしたことがある。窓口の担当者に「まだ働けるでしょう」と言われ、「どこも前科者なんて雇ってくれないから困っているんだ」とぶちまけたこともあった。

 「味付けは薄いけどメシも出るから」。刑務所に戻ることが決まっても男性に悲壮感はない。でも、出所する時はうれしいんでしょう? 「うれしいと思ったことはないかな。行き場もないし、寝場所から心配しなくちゃいけないから」

 判決で「規範意識の欠如は明らか」と非難された男性が、面会時に語気を強めた場面がある。お金を奪おうと思ったことはないのか、と尋ねた時だ。「俺はカネはなくても、空き巣やひったくりをしたことは一度もない。人として嫌だ」
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