松山千春の「神対応」 1時間遅延の機内で「大空と大地の中で」を熱唱

シンガーソングライター・松山千春さんの「神対応」に、インターネット上で称賛の声が寄せられている。

 2017年8月20日正午ごろ、松山さんは新千歳空港から大阪(伊丹)空港行きの便に乗った。だが飛行機は、混雑により出発予定時刻を過ぎても出発できず、乗客は約1時間待たされることに...。松山さんはそこで、自ら客室乗務員に掛け合い、マイクを借りると、自身の代表曲「大空と大地の中で」を歌い出したというのだ。

■出発予定11時55分→実際の出発時刻13時3分

 ANA(全日本空輸)の札幌(新千歳)発、大阪(伊丹)行きの便は2017年8月20日、出発予定時刻の11時55分を過ぎても、動かないままだった。J-CASTニュース編集部が21日、ANAの広報担当者に取材すると、飛行機の出発時刻は13時3分まで遅れていたことが分かった。約1時間、乗客は機内で待機を余儀なくされていた。

 同担当者によると、理由は保安検査場の混雑だった。大渋滞を起こしていたという。「機内のお客様にお詫びのメッセージを流していました」

 乗客の1人は21日、J-CASTニュース編集部の取材に応じ、機内の雰囲気について「機内はピリピリした様子でした。また、遅延の理由が保安検査場の混雑によるものでしたので余計に私を含めた乗客はイライラしていたと思います」と振り返った。別の乗客も同日、「1時間、機内に座っていて、早く飛ばないかなぁ〜と思っていた」と述べた。

 だが出発時刻から1時間が経とうとする12時50分頃、乗客たちはある有名人の登場で度胆を抜かれることとなる。シンガーソングライターの松山千春さんが突然、客室乗務員用のマイクで乗客に話し始めたのだ。乗客の1人によると、松山さんは「滅多にこんな事はないんです。皆さん頑張ってますから、もう少しお待ち下さい」などと語りかけ、自身の楽曲「大空と大地の中で」の冒頭部分を歌い出した。

  「果てしない 大空と 広い大地の その中で
  いつの日か 幸せを 自分の腕でつかむよう」

「それまでの事は何処かに吹っ飛んで、旅のエンディングが素晴らしいものになった」松山千春の「神対応」

松山さんは歌い終わると、

  「皆さんのご旅行が、またこれからの人生が、すばらしいことをお祈りします。もう少しお待ちください。ありがとうございました」

と話し、拍手喝采が巻き起こった。乗客の1人によると、「歌われた後は、場はなごみ、乗客のいらだちが歓声に変わって、即席コンサートのようなものになってました」という。

 取材に応じた乗客たちは皆一様に、松山さんに感謝の弁を述べた。

  「それまでの事は何処かに吹っ飛んで、旅のエンディングが素晴らしいものになった事に、感謝でしたね」
  「私たち乗客のいらだちを和ませようと、大変粋なはからいをしていただき、感動いたしました。機内にもかかわらず、コンサートのようで僅かですがとても楽しい時間を過ごさせていただきました」

 ANAの広報担当者も取材の際、「松山様のご厚意に感謝申し上げたい」と話していた。

松山さん「皆の気持ち考えたら、何とかしなきゃ、みたいな」

 松山さんはその足で、OBCラジオ大阪のスタジオへ向かった。同日(8月20日)夜21〜22時に放送されるレギュラー番組「松山千春のON THE RADIO」(NACK5制作)の生放送に出演するためだ。

 番組もそろそろ終盤に差し掛かろうとした頃だった。「熱っぽくラジオ大阪から語らせていただいていますけど...こんな話、聞いてくれるか」。松山さんはしんみりとそう切り出すと、飛行機内で起きたことを赤裸々に語り始めた。

  「機長からアナウンスがあり、保安検査が大渋滞になっていて、この便に乗る予定の方々が巻き込まれてしまい...(中略)そうか〜皆頑張ってあそこに並んでな、待っているんだな、みたいなね。それにしても遅いな、みたいなね。段々雰囲気が悪くなるんだよ、分かるべ?機内の雰囲気が悪いんだよ(笑)」

 松山さんはそこで、立ち上がって客室乗務員のところへ行った。

  「『すみませんが、みんなイライラしています。マイクを貸していただけますか』って言ったら、キャビンアテンダントの方が『機長に伝えますので』。そしたら機長さんからOKが出ました。『じゃあ、ここを押して話してください』」

 そして、

  「千歳発伊丹行きにご搭乗の皆さん、松山千春です。もうシートベルトされてから1時間以上も経つ。いらだつでしょう、むかつくでしょう。しかし、安全に飛んでくれることを自分たちは信じていますし、皆苦労していますから待ちましょう。『旅は道連れ』ですから、一緒に旅行を終えましょう...と言って、『果てしない 大空と〜』と歌ったんだよ」

という。

 松山さんはそこまで振り返ると、「おれね、歌い出してから40年以上経つけど、キャビンアテンダントのマイクで歌ったの初めて(笑)」と苦笑いし、

  「おれも出しゃばったことしているな、と思うけどさ、皆の気持ち考えたら、何とかしなきゃ、みたいな。機長さんよく許してくれたな、と思うわ。うそみたいな、話でした」

と締めくくった。