パチンコ店客離れ心配 富山県内、屋内禁煙論議注視

2020年の東京五輪・パラリンピックを前に受動喫煙防止対策の議論が過熱する中、サービス業の施設を原則「屋内禁煙」とする厚生労働省の方針を巡り、県内のパチンコ店関係者が頭を悩ませている。来店客の喫煙率は一般平均よりも大幅に高く、喫煙できなくなれば客離れにつながる可能性があるからだ。一方で「業界のイメージアップになる」と前向きに捉える声もある。 (社会部・湯浅晶子)

 政府は東京五輪・パラリンピックに向け、公共の場で受動喫煙を防止する対策の強化を目指している。

 厚労省は昨年10月、飲食店やホテルといったサービス業の施設は、喫煙室の設置を認めた上で、屋内を原則禁煙とする案を公表した。飲食店の規制に慎重な姿勢の自民党が反発し、協議は平行線をたどっている。

 飲食店を巡る議論に注目が集まる中、同じサービス業の施設として規制が強まる見通しになっているパチンコ業界にも懸念が広がる。滑川市内でパチンコ店を経営する山本容基県遊技業協同組合理事相談役は「客離れに直結することが予想される」と話す。

 日本遊技関連事業協会(東京)によると、全国のパチンコ店利用者の喫煙率(2015年)は43・2%で、一般成人の19・9%の2倍以上。男性客の喫煙率は64%で一般の約2倍、女性客は48%で一般の5倍近くに上るという。

 山本相談役の店舗に足を運ぶ人も、ほぼ半数が喫煙者だという。喫煙室の設置が認められても「『たばこを吸いながら遊びたい』というお客さんは多い。業界として真剣に対応を考えなければならない課題だ」と話す。

 客の反応はさまざまだ。富山市内のパチンコ店を訪れていた市内の女性(62)は「験担ぎの思いを込めて、たばこに火を付けることもある。禁煙は困る」。一方、同市内の男性(52)は「口寂しいが仕方ないのでは」と理解を示す。

 県内で23店舗を展開する澤田グループ(魚津市吉島)では、店舗改装の際に禁煙の休憩ルームを設置するなど、たばこを吸わない人が快適に過ごせる空間づくりに力を入れている。遊技台の間には、煙が横で遊技をしている人の方へ流れていくのを防ぐ透明なボードも設置。澤田康弘常務は「パチンコ店が嫌われる理由の一つに、たばこの臭いがある。マイナス要素を減らしたい」と言う。

 全国には全席禁煙のパチンコ店もあり、「禁煙は長い目で見れば、新しいお客さんを呼び込むきっかけになるかもしれない。不安と希望の両面から議論の行方を見守っている」と話している。