東証2部は1部よりも居心地が良い? シャープ、象印、ヱスビー…各社の理念

経営危機の東芝株が東京証券取引所1部から2部に移る一方で、シャープは2部から1部への復帰に動き出した。「2部は1部より格下」との見方が一般的だ。ただ、1部上場の要件を満たすのに、あえて2部にとどまる企業も存在する。上場市場にこだわらず、のびのびと経営理念を追求するのだという。(大島直之)

 「私は有言実行の人。(6月)29、30日には東証1部復帰を申請する」。シャープの戴正呉社長は同月20日の株主総会でこう宣言した。同月30日には指定替えを申請し、1部再上場の準備に入った。シャープは平成28年3月期に2期連続の債務超過となり、東証のルールによって同年8月から東証2部に降格。しかし、親会社の台湾・鴻海精密工業の下、29年3月期で債務超過を解消。1年足らずで復帰申請にこぎつけた。

 1部上場のメリットは、財務や業績が安定していると評価されることで、より低い金利での資金調達が可能になり、知名度の高さから人材獲得もしやすくなることなどにある。シャープが早期復帰に執念を見せたのは、「復活」を社内外にアピールし、ブランド力を回復するためだ。

 東証2部は、1部よりも時価総額、株主数など上場に関する条件が緩やかに設定されている。例えば、1部が「株主数2200人以上」「時価総額250億円以上」なのに対し2部は「株主数800人以上」「時価総額20億円以上」といった具合だ。このため一般的に「厳しい条件をクリアした1部上場企業の方が格上」との見方をされる。

 しかし、こだわらない企業も存在する。すでに一定の知名度を確立していたり、1部上場以外に経営体質強化の目標を持っていたりする場合だ。例えば、象印マホービン(大阪市北区)は昭和62年に大阪証券取引所(現大阪取引所)2部上場を経て、現在に至る。同社広報部は「現在は資金に余裕があり、ブランドも広く認知してもらっている」という。あえて1部を目指す理由がないとの認識だ。

 ヱスビー食品(東京都中央区)は、36年に東証2部に上場した。一部の投資家から1部上場申請を期待する声もあるというが「1部にふさわしいレベルの利益水準、財務体質の安定性、経営効率化など経営品質を備えるように努めたい」(広報担当者)とする。

 また、1部に上場すれば株主が増え、株式売買の規模も大きくなる。そうなれば機関投資家やファンドに注目され、経営に対する注文が増え圧力も高まりやすい。「最近は、投資家から株主還元の強化などを求める声があがるようになった。オーナー一族が主要株主を占めるような企業の場合は、2部の方が経営の自由度を確保できて都合がいい」(大手証券アナリスト)との指摘もある。