ドバイでしょうゆ「禁止」 想定外のその理由…当局の不可思議な対応 スーパーでは今も普通に販売

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中東のドバイでこのほど、日本製のしょうゆが禁止になったと地元紙が報じました。しょうゆは日本の他にも中国、東南アジアなどで幅広く使われていますが、中東ではあまりなじみがありませんでした。ところが、すしをはじめとして日本食の人気が広がり、近年はスーパーでも手軽に日本ブランドのしょうゆが買える国が増えています。どんな理由があったんでしょうか。

「アルコールが検出された」? ドバイでしょうゆ「禁止」

複数の地元紙は8月8日、ドバイのあるアラブ首長国連邦の気候変動・環境省がキッコーマンのしょうゆの輸入を禁じた、と一斉に伝えました。当局の検査で、アルコールを含んでいることが確認されたとしています。

 イスラム教で飲酒はタブー。イスラム教を国の宗教とするアラブ首長国連邦は、特別な許可を受けた店舗や、外国人が利用するホテルやバー以外でアルコール類を売ることを禁じています。

 しかし、英字紙「ザ・ナショナル」の取材に対し、ドバイのあるレストラン経営者は、キッコーマンのしょうゆを約15年前から使っていると答えています。なぜ、今になって?

 日本のキッコーマン本社に取材すると、「報道は把握しているが、アラブ首長国連邦側からキッコーマンには何の連絡もありません」とのこと。

 キッコーマンがアラブ首長国連邦向けに輸出しているしょうゆは、シンガポールの工場でつくられており、アルコールを含んでいないそうです。

 イスラム教徒はインドネシア、マレーシアなど東南アジアにも住んでいます。独自の技術で、アルコールが出ない製法をとっているとのこと。

 実は、記事には「輸入禁止は日本の工場でつくられたしょうゆに限る」とも書かれていました。

ものによってはビール並みのアルコール濃度 ドバイでしょうゆ「禁止」

しょうゆにはふつう、アルコールが含まれています。

 キッコーマンの説明によると、一般的なしょうゆは大豆と小麦に食塩水をまぜ、発酵させることでつくります。このとき、酵母によって、小麦に含まれる糖分がアルコールになります。

 アルコールはしょうゆの良い香りのもとになり、かびを防いで保存性を高める効果もあるそうです。

 なお、酵母で麦を発酵させればビール、米を発酵させれば日本酒です。

 つくる過程でできるものなので、ふつうのしょうゆの「原材料」にはアルコールが含まれていません。

 しょうゆのアルコール度数はおよそ3%。ただし、減塩しょうゆは5%程度だそうです。普通のしょうゆから塩分をとりのぞく方法でつくられており、アルコールを足すことで保存性を高めているからだとか。この種のしょうゆは、原材料名に「アルコール」と書かれています。

 アルコール飲料で言うと、一般的なビールやチューハイのアルコール度数が5%、サントリー「ほろよい」などの低アルコール商品が3%ほどです。

 ただし、しょうゆはビールのようにゴクゴク飲むものではありません。缶1本分、350ミリリットルを一息に飲み干すことは不可能に近いでしょう。

 キッコーマンの場合、妊婦や子どもへの影響に対する問い合わせには「つけたりかけたりして少量使う分には特に心配はないと思われます。とは言え、ご心配であれば過熱調理にご使用ください」と答えているそうです。

中東では「アルコール抜き」しょうゆを販売 ドバイでしょうゆ「禁止」

なので、キッコーマンはノンアルコールのしょうゆを開発。日本でも8月21日から「ハラールしょうゆ」の商品名で売り出しています。アラブ首長国連邦向けには、当初からアルコール抜きの商品を輸出していたそうです。今回の措置はなんだったんでしょうか?

 アラブ首長国連邦の当局は、朝日新聞の取材に回答をしていません。

 ただ、渡辺淳基・朝日新聞ドバイ支局長が近くのスーパーマーケットを回った限りでは、報道後も以前と同じように、シンガポール工場でつくられたキッコーマンのしょうゆが店頭に並んでいたとのことでした。

 キッコーマンも、今回の件によるビジネスへの影響は「ない」と回答しています。

 以下は推測ですが、ドバイには日本から直輸入した食材を扱う「日本食材店」がいくつかあり、日本でつくったしょうゆも売られています。当局はこうした商品を検査したのではないでしょうか。

 ただ、値段が高いこともあり、ふつうに生活していて口に入るものではありません。

 また、みそや酢も発酵食品で、日本製のものはアルコールを含んでいます。こちらは輸入禁止になったという報道はありません。

 今回の混乱は、当局の理解不足が招いたという一面もありそうです。