イチローの“超遅球”72キロ打ちが米国でも話題「彼の油断にはつけ込めない」

登板して相手捕手と対戦、レフト前ヒットにMLB公式サイト「彼は素晴らしい」

 マーリンズのイチロー外野手が26日(日本時間27日)、敵地レンジャーズ戦に「6番・右翼」で先発出場。4回途中9安打で自己ワースト10失点(自責10)と大炎上した先発のダルビッシュ有投手から適時二塁打を放つなど、3打数2安打1打点3得点3四球で5出塁と活躍した。9回無死二塁の場面では、大差で登板した相手捕手ブレット・ニコラスの“遅球”に戸惑いながらもレフト前ヒットを放ったが、“安打製造機”が放ったこの一打をMLB公式サイトも取り上げるなど米国でも話題となっている。

 3年ぶりの対決となったダルビッシュに対して、2回の第1打席は遊ゴロに打ち取られたイチロー。しかし、3回無死一、三塁の場面では右中間へタイムリーツーベースを放った。その後は、救援投手から3打席連続四球。米データサイト「ファングラフス」によると、3四球は6度目のメジャー自己最多タイ記録で、敬遠を除く1試合3四球は2003年4月12日レンジャーズ戦以来、14年ぶり2度目となった。

 そして、球場を大きく沸かせたのは9回。18-8と大差がついた場面で、レンジャーズは捕手のニコラスをマウンドへ。マーリンズは先頭から4連打でさらに3点を加え、無死二塁でイチローが打席に立った。初球は内角への68マイル(約109キロ)。明らかなボール球に見えたが、審判がストライクをコールすると、イチローは“本当“の捕手のルクロイに何か話しかけながら笑みを浮かべる。

 続く高めへの56マイル(約90キロ))はファウル、内角への74マイル(約119キロ)は珍しく自打球。あまりに遅いボールにタイミングが合わず、追い込まれてしまう。打席で終始、苦笑いだったイチローだが、4球目はさらに遅く、山なりで来た45マイル(約72キロ)の高めへの“超遅球”に何とかタイミングを合わせ、レフト前に運んだ。

米国の辞書で「安打」は「イチローがほぼ毎打席で得るもの」と定義!?

MLB公式サイトの動画コーナー「Cut4」は「もし君が期待しているなら無駄だ。時速45マイルのイーファス・ピッチでもイチローの油断に付け込むことはできない」とのタイトルで特集を掲載。記事では、米国の有名な辞書で「安打」を「イチローがほぼ毎打席で得るもの」だと定義していると、冗談交じりに伝えている。

 さらに、「野球史上最も才能あるバット職人の一人として彼をしっかりと確立させたバットを用いて、このしたたかなベテランは何年にも渡ってあらゆるものを成し遂げてきた」と指摘。ニコラスからヒットを放った場面を動画で紹介している。

 遅球に戸惑いながらも、最後はしっかりと結果を残した背番号51。それだけに、記事では「イチローにとっては、他の全ての打席での時速45マイルでない通常の投球と比べ、打ちやすさに違いはなかった」とした上で、「言い換えると、彼は素晴らしい」と結論づけた。

 これでメジャー通算3059安打として、歴代22位のクレイグ・ビジオ(3060本)まで残り「1」。4時間2分の長丁場となった試合で今季3度目のマルチ安打をマークし、22-10の勝利に貢献した。打率は.234に上昇。日米通算では世界最多の4337安打を放ってきたイチローだが、名場面の1つとなった。