リーマンブラザーズ破綻

 米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)劇で、「公的資金による安易な救済は行わないという政治的意思」(米投資会社)を示した米国政府は、金融機関の淘汰(とうた)を加速させて早期の金融危機克服を目指す姿勢だ。バブル崩壊後の金融危機としては、山一証券の処理の例と重なって見えるが、日銀の無担保特別融資(特融)を行った後、金融機関の破綻処理や資本増強に公的資金投入を本格化させ「ツービッグ・ツーフェイル(大き過ぎてつぶせない)」路線に突き進んだ日本とは異なった展開だ。

 「つぶれるべき金融機関が退場して、初めて金融不安が解消する。問題先送りの末に公的資金投入額を膨らませた日本の『失われた10年』を反面教師にしたんだろう」。金融庁幹部は16日、米国の対応をこう評価した。

 日本ではバブル崩壊後、抜本的な不良債権処理を先送りしたあげく、97年11月に三洋証券、山一証券、北海道拓殖銀行が連続破綻。金融危機が深刻化した。欧米で幅広く国際業務を展開する山一の処理で、日本の当局は海外への金融不安の波及を懸念。決済機能を持たない証券会社の山一に対し、異例の日銀特融を行い、処理を支援した。その山一や日本長期信用銀行の破綻で「日本発の世界金融恐慌」への危機感を深めた政府は98年に、公的資金投入による破綻処理や大手行への資本増強の枠組みを整備。税金を使った金融危機への抜本対応にかじを切っていった。

 低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題を端緒とする今回の米金融危機でも、市場は「米政府も日本の前例を踏襲する」と読んでいた。実際、今年3月の証券5位、ベア・スターンズ処理では、米連邦準備制度理事会(FRB)が焦げ付きを覚悟で3兆円近い緊急融資を実施、JPモルガン・チェースへの救済合併を支援した。また、今月7日には、2000億ドルの公的資金投入枠を使い、政府系住宅金融公社2社を政府管理下に置くことを決め、市場では「迅速な危機予防策」と高い評価を得た。

 しかし、今回のリーマンの破綻劇で市場の見方は一変した。リーマンの経営危機はベア処理直後から分かっていたのに、韓国の政府系銀行による救済合併構想など迷走したあげく、後始末は法的処理に委ねられ、日本のように公的資金の本格投入の道も開けなかったからだ。日本の金融危機時と比べると、IT(情報技術)発達などで情報伝達速度はケタ違いに速くなり、金融機関の経営危機の連鎖も早まっている。このため「当局は市場に追い詰められてドタバタ劇を演じているだけではないか」(銀行系証券)との見方も出ている。米当局は市場規律の重視を強調するが、今回のリーマンの破綻で今後、米国の大手金融機関は市場での資金調達が一層難しくなるのは必至。「危険な賭けだ」(米系証券)と懸念する声も出ている。