「なぜ」語られぬまま オウム裁判終結 遺族むなしさ募る

「辛い事実終わらない」
長い長い裁判が終わった。遠藤誠一被告(51)の上告を棄却し、オウム真理教による一連の事件を締めくくった21日の最高裁判決。16年の歳月を費やした裁判でようやく迎えた区切りにも、遺族は問い続けた「なぜ」への答えを見つけられないむなしさを募らせた。なぜ事件は起きたのか。なぜ命を奪われなければならなかったのか。裁判は終わっても、家族を失った現実と向き合う日々は続く。「これがオウム裁判なんだ、オウムなんだと強く感じた」。営団地下鉄(現・東京メトロ)霞ケ関駅の助役だった夫、一正さん=当時(50)=を殺害された「地下鉄サリン事件被害者の会」代表世話人、高橋シズヱさん(64)は判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、やりきれない胸中を明かした。
最後の被告となったのは、夫を奪ったサリン製造にかかわった遠藤被告。「皮肉にも反省や謝罪のひとかけらもない被告で締めくくられた」と悔しさをにじませた。
地下鉄事件の実行犯、林郁夫受刑者(64)=無期懲役が確定=の初公判から傍聴を重ね、この日で436回目を数えた。
法廷で謝罪や反省の言葉を述べる被告もいた。「私が生きていちゃいけない」。声をあげて泣いた林受刑者の姿は今も脳裏に残る。しかし、一方で「この人の言っていることは本当なのか」との疑問を消すことはできなかった。
遠藤被告の上告審判決は、傍聴席の最前列で見守った。主文を言い渡した裁判長が閉廷を告げると、深々と頭を下げた。
裁判の終結が近づくにつれ、毎日のように「あの日」を思い出すという。一正さんが搬送された病院に駆けつけた子供たちが「お父さん。お父さん」と泣いたこと。棺に眠る夫の体はすでに硬く、ろう人形のようだったこと…。
高橋さんは「死刑囚は私たちの苦しみや怒りを想像できていないと思う」と厳しい表情で述べた。
松本サリン事件で次男=当時(23)=を亡くした小林房枝さん(69)も「一日たりとも、息子が亡くなったという事実から解放されたことはなかった。裁判が終わっても私たちはつらい事実と向き合わねばならない」。死刑を言い渡された元幹部らは計13人。「どういうふうに執行されるのかを静かに見守りたい」と静かに語った。






