ソフトバンク 米携帯電話会社の買収検討

スマートフォンの普及で携帯電話の市場が世界的に拡大するなかで、大手通信会社の「ソフトバンク」はアメリカにも一気に通信ネットワークを広げるため、全米第3位の携帯電話会社「スプリント・ネクステル」の買収を検討していることが分かりました。
投資額はおよそ1兆円に上る大型の企業買収になるとみられ、実現すれば世界的な通信グループが誕生することになります。

関係者によりますと、「ソフトバンク」が買収を検討しているのは、携帯電話事業を手がけるアメリカの大手通信会社「スプリント・ネクステル」で、契約件数は5600万を超え、最大手の「AT&T」や「ベライゾン」に次ぐ全米第3位の顧客基盤を有しています。
ソフトバンクはスプリントの3分の2を超える株式の取得を目指して交渉を進めており、関係者によりますと、投資額はおよそ1兆円に上るものとみられます。
ソフトバンクとしてはスマートフォンの急速な普及が進むなど、世界的に携帯電話の市場が拡大する中で、先進国の中でも、成長を続けるアメリカに進出し、通信ネットワークと顧客基盤を一気に拡大しようというねらいがあるとみられ、実現すれば契約件数が9000万を超える巨大通信グループが誕生することになります。
スプリントは、アップルのiPhoneを取り扱っているほか、新しい高速通信規格「LTE」への対応を進めるなどソフトバンクと戦略の方向性が一致しており、歴史的な円高が続いていることも背景にあるとみられます。
ソフトバンクは今月、イー・アクセスを1800億円で買収すると発表し携帯電話の契約件数で国内2位のKDDIを上回る見通しで、積極的な拡大戦略に出ています。
携帯電話の業界では、アメリカでも全米4位の「Tモバイル」が5位の会社との合併を決めるなどスマートフォンの急増や高速通信への対応を進めようと、世界的に再編の動きが加速しています。

スプリント・ネクステルとは

スプリント・ネクステル」は、アメリカ全域で携帯電話事業を展開している大手通信会社で、2004年にスプリントがネクステルを買収して設立されました。
契約件数はおよそ5600万と「AT&T」「ベライゾン」に次いで、全米第3位となっています。
スプリントは、他社に遅れて去年からアップルのiPhoneの取り扱いを開始したほか、最近になって新しい高速通信規格「LTE」の整備にも力を入れていますが、契約件数では上位2社に差をつけられています。

これまでも積極的な買収

ソフトバンクは、今から31年前の昭和56年にパソコン関連企業として事業を始めました。
平成に入ってからインターネット関連で海外の企業などへの投資を加速させ、平成8年にアメリカの企業との共同出資で、インターネット検索サイトの「ヤフー」を設立。
平成16年には当時の「日本テレコム」を買収して固定通信の事業に参入するなど事業を拡大し、翌年にはプロ野球の「福岡ダイエーホークス」、現在の「福岡ソフトバンクホークス」を子会社化して球団経営にも乗り出しました。
ソフトバンクは、6年前の平成18年に当時のボーダフォンの日本法人を買収して携帯電話事業に参入しました。
その後、携帯電話基本料金の値下げやアップルのiPhoneの取り扱いをきっかけに契約者数を伸ばしてきました。
そして、2年前の平成22年には、当時経営に行き詰まっていたPHSの「ウィルコム」を傘下に収めました。
さらに、今月に入ってからは、携帯電話業界4位の「イー・アクセス」を1800億円で完全子会社にすると発表し、国内の携帯電話業界は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3つのグループに集約されることになりました。
ソフトバンクは、イー・アクセスの買収で4000万近い契約件数を抱えて国内2位に浮上するほか、スプリントの買収が実現すれば合計の契約件数が9000万を超える世界的な通信グループになります。

世界の携帯会社は

世界の携帯電話市場では、ヨーロッパやアジアなどの巨大な通信会社がスマートフォンや携帯電話の事業を展開しています。
中でも中国最大の携帯電話会社「チャイナモバイル」は契約件数が5億件を超えています。
またイギリスに本拠を置く携帯電話会社「ボーダフォン」も、ヨーロッパやアフリカなど世界での契約件数は4億件以上に上っています。
アメリカ最大の通信会社「AT&T」の契約件数も1億件余りです。
これに対し日本国内で最大手のNTTドコモの契約件数は6000万件余り、ソフトバンクは今度買収するイー・アクセスを合わせてもおよそ4000万件で、世界的に見ると、日本の通信会社は規模の面では世界の通信会社に及ばないのが現状です。

米の携帯市場 業界再編の動きも

アメリカの携帯電話市場では、日本と同じようにスマートフォンが急速に普及しているほか、通信の混雑に対応するため、新しい高速通信の整備が課題になっていて、業界再編の動きも起きています。
アメリカ国内の携帯電話の契約件数は、去年末の時点でおよそ3億2000万と毎年増加が続いていて、とくにスマートフォンが急速に普及しています。
携帯電話会社で最も契約件数が多いのは「AT&T」で1億0500万、次いでボーダフォン傘下の「ベライゾン」が9400万、3位が今回ソフトバンクが買収を検討している「スプリント・ネクステル」で5600万となっています。
4位はドイツ・テレコム傘下の「Tモバイル」ですが、5位の「メトロPCS」と合併することを今月初めに発表しています。
各社とも、iPhoneのようなスマートフォンの人気機種をどれだけ取り扱うことができるかや、新しい高速通信規格「LTE」のインフラ整備をいかに速く進めるかが経営の重要課題になっていて、Tモバイルとメトロの合併もこうした事情が背景にあります。
スプリントにとっては、ソフトバンクと組むことによって、スマートフォンの展開やインフラの整備を強化するねらいがあるものとみられます。

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