ソフトバンク、米市場進出=「世界一」へ大きな一歩−待ち受ける難題

20130629-00000023-jijnb_st-000-1-viewソフトバンクは米携帯電話3位スプリント・ネクステルをめぐる米企業との激しい争奪戦を制し、米国市場への参入を果たすことになった。孫正義ソフトバンク社長が自ら新スプリントの会長に就任、経営のかじを取り、グループの究極の目標である「世界一の会社」に向けて大きな一歩を踏み出す。だが、国土が広大で巨額の設備投資が必要となる米国での勝負には、多くの難題が待ち受けている。

実現する「ドコモ超え」

「創業以来数々の大ボラを吹いてきたが、実現させてきた」。孫社長は先週の株主総会で胸を張った。スプリントの買収を完了すれば、売上高で国内首位のNTTドコモを上回る携帯電話会社が誕生。契約数もドコモを3000万件以上引き離し、孫社長が公言してきた「ドコモ超え」が数の上では現実となる。
 ソフトバンクが米国に進出するのは、人口が減少する日本国内では大きな成長を見込めないため。複数の先進国市場への参入を検討したが、人口が伸び、1人当たり売上高も多く「規模を追求できるのは米国だけ」(関係者)と対象を絞った。
 孫社長は米国進出を「大きなばくちだが、成功する自信がある」とし、英ボーダフォン日本法人(現ソフトバンクモバイル)やPHS専業のウィルコムの経営を立て直した経験を生かせると強調する。携帯通信に適した周波数帯を既に所有するほか、経営統合による相乗効果で携帯端末の調達コストや設備投資額を抑えられるため、「ユーザー数が伸びず、1顧客当たりの売上高が真っ逆さまに落ちていたボーダフォンの時よりは、楽ではないか」(孫社長)とみる。

2強との差は歴然

ソフトバンクが挑む米国は、首位ベライゾン、2位AT&Tの2強が市場シェアの6割強を押さえている。業績悪化で台所事情が火の車だったスプリントとの力の差は歴然だ。
 例えば、スマートフォン(多機能携帯電話)の普及に伴うデータ通信の増加で需要拡大が見込まれる高速通信サービス「LTE」。3月末時点で整備済みの地域はベライゾンの491、AT&Tの190に対し、昨年7月に整備を開始したスプリントは88にとどまる。
 下位を見ると、業界4位と5位が合併し、TモバイルUSが発足。生き残りを懸けた再編の動きは続いており、油断はできない。
 スプリントは旧型回線サービスの停止を前に顧客の乗り換えがうまくいかず、契約者数の流出が続き、経営てこ入れは「待ったなし」。ソフトバンクは安全保障に関する米政府の懸念に対応するため、スプリント子会社で使用している中国製の通信機器を付け替える膨大な作業も課された。
 一方、米国の携帯電話会社がやっていることは「通信インフラを提供するだけ」(専門家)との見方が強く、高付加価値サービスで定評のある日本で成功したソフトバンクに期待する声も多い。ITアナリスト、ジェフ・ケーガン氏は「まずはスプリントの再建。それが成功すれば、米国の市場全体を変えるつもりだろう」と予想した。

ソフトバンクの事業拡大の経緯

1981年 日本ソフトバンク設立、パソコンソフトの流通業開始
  90年 ソフトバンクに社名変更
  94年 株式を店頭登録
  98年 東証1部上場
2001年 ADSL回線によるインターネット接続事業開始
  04年 日本テレコムを子会社化、固定電話事業に参入
  05年 福岡ダイエーホークスを取得
  06年 英ボーダフォン日本法人を買収、携帯電話事業に参入
  10年 経営破綻したPHSのウィルコムの再生を支援
  13年 国内携帯電話4位のイー・アクセスを関連会社化
     米携帯電話3位スプリント・ネクステル買収の見通し