三菱重工 仏重電の買収検討 独シーメンスと共同で

三菱重工業と独重電大手シーメンスは11日、仏重電大手アルストムの一部事業を共同買収する検討に入ったと発表した。16日をめどにアルストムの取締役会に提案書を提出する。詳細は明らかにしていないが、アルストムのエネルギー部門の共同買収を検討する見込み。同部門に対しては米ゼネラル・エレクトリック(GE)が既に約1兆7000億円で買収を提案しており、日米欧を舞台にした買収合戦に発展する様相だ。

 アルストムはガスタービン製造や電力会社向けの保守・修理サービスなどを手がけるエネルギー部門と、仏高速鉄道「TGV」の車両生産などを手がける鉄道部門が柱。欧州に加えて新興国での事業でも強みを持つ。シーメンスは火力発電や風力発電用機器でアルストムと競合しており、買収が実現すればGEを抜いてエネルギー関連事業で世界首位に立てる。欧州メディアによると、シーメンスは既に非公式に同社の鉄道事業をアルストムに譲渡する案も提案しており、独仏重電企業による大規模な事業再編を目指す方針だ。

 一方、GEは4月末にアルストムに対し、総額約170億ドル(約1兆7000億円)で火力発電、再生可能エネルギー、送電の3事業の買収を提案した。これに対し、仏政府が国内雇用や、エネルギー政策の基幹である原発事業への影響を懸念して、欧州連合(EU)域内企業であるシーメンスに対して対抗案を出すよう要請。対応が注目されていた。

 シーメンスは先月、三菱重工と製鉄機械事業を統合する事業提携で合意しており、今回は、巨額の資金を必要とする買収合戦に乗り出す上で、協力をあおいだと見られる。三菱重工は「シーメンスからの申し入れを受けた」と明らかにした上で「フランス政府を含めた全ての関係者に有益な解決策につながると確信している」とコメント。シーメンスは「今回の取り組みに期待している」とのコメントを発表した。

 ◇事業規模5兆円を目指す

 シーメンスとの共同買収に乗り出す三菱重工の狙いは事業規模の拡大だ。同社は「事業規模5兆円を目指す」(宮永俊一社長)と、2014年3月期の連結売上高3兆3495億円からの積み上げを図っており、M&A(合併・買収)にも積極的だ。

 今年2月には日立製作所と火力発電分野を事業統合し「三菱日立パワーシステムズ」を設立。同分野で世界首位を目指しており、シーメンスと共同で、アルストムのエネルギー部門の買収に成功すれば、発電事業の強化につながる可能性もある。

 一方、火力発電分野でGEと連携する東芝は、GEがアルストムからの事業買収に成功した場合、同社の送配電部門譲渡をGEに提案することを検討中だ。シーメンス、GEのどちらが買収に成功しても、日本企業が大きく関わることになりそうだ。