浜ちゃん不倫FAXに思う芸能界のお作法

グラビアタレントとの不倫交際を報じられたダウンタウン浜田雅功(51)が、「羽を伸ばしすぎた」とのコメントを発表した。芸能マスコミとしては本当は会見を開いてほしかったが、最近では珍しい「所属事務所を通じての署名ファクス」という対応をしただけでも評価したいのである。

写真週刊誌「フライデー」の早刷りがマスコミ各社に届いたのは12日。14日に浜田がコメントを出すまで何やら時間がかかったが、13日に相方松本人志が番組収録で「白米3杯はいける」と面白がってネタにしたのをきっかけに署名コメントを作成。翌日、吉本興業からファクスで各社に公表された。最近は「所属事務所を通じてファクス」だけでも相当真っ当なマスコミ対応だったりするので、老舗事務所と看板タレントの律義な仕事ぶりに見えてしまった。

 そもそも、冠婚葬祭やスキャンダル系のコメント出しでは「所属事務所を通じて」という手続きが激減しているのだ。たいがいは「ブログに書きます」のパターン。マスコミ各社のファクス番号を控えない広報でもできる上、何よりブログの絶好の宣伝になる。タレントの日記の延長のようなカジュアルさは演出できるけれど、「所属事務所が責任を持って対応した」というフォーマルさが感じられないのだ。

 「ブログに書きます」ならまだいい方で、ここ数年は「居留守」もひとつのジャンルになりつつある。「担当者が外出中」とか「折り返す」などといつまでもすっとぼけ、ある日バラエティー番組を見るとぶっちゃけトークをして出演チャンスを得ているパターンだ。今風では済まないイージーな事務所にあっけにとられることが多いので、きちんと広報担当者がいるちゃんとした事務所が相手だとほっとするのも事実である。

 振り返れば、90年代までは、スキャンダルが明るみに出たタレントはファンに向けて会見を開くのが当たり前だった。音楽業界はミリオンセラーが毎年40作くらいある全盛期であり、俳優勢は映画、舞台、ドラマなどの主戦場で活躍していた時代。歌手も俳優も目に見える形で「ファン」がいたため、自分の口から喜びや謝罪などの報告をしないとがっかりさせてしまうかもという責任感や戦略があったように思う。実際、90年代まではダウンタウンも不倫や交際発覚などで会見を開いていた。

 しかし、90年代半ばから会見よりもファクスで済ます時代になった。誰から始まったスタイルかは分からないが「質問を受けずに言い分だけ伝えられる」都合の良さから一気に広まった。タレントにとっても、ファンの目線がどこにあるのか分かりにくい時代になり、会見を開く意味をイメージしにくくなったのだと思う。

 芸能界のファクス化が残念すぎて、94年に名作を集めた「芸能人ファクス大賞」なる企画記事を掲載したことがある。読み返すと、このころはまだ「一報へのコメントはファクスで済ませ、後日会見を開く」という二段構えの時期だった。文章もほとんどは手書きだったことに驚く。記事では出川哲朗の結婚報告ファクスを勝手にグランプリに選んだけれど、丁寧なクセ字で「日本一抱かれたくない男のところに日本一のお嫁さんが来てくれました」と書かれ、読み手の心を打つ名作でもあった。

 ファクスはその後、直筆でもなくなり、ブログになり、最近はツイッターで報告する例も出てきた。ここまでくると、事務所が仕切ってくれないレベルのタレントなんだろうかと心配になってしまう。公の場を設けるより、ファンとの閉じた空間の方がローリスクであるという選択がここまで進化してきたけれど、今や既存のマスコミよりも、街でいきなり向けられる写メや「○○が表参道でデートしてる」という無法ツイートなどの最小メディアの方がよほど脅威になっているのは皮肉な話だ。

 浜田に話を戻せば、自身のフィールドである冠番組でうまくネタにしてコメントの代用とすることもできたろうに、まず公にメッセージしてみせた。内容も、反省と、家族への思いと、お笑いタレントらしい面白さと、しょんぼりしている様子が伝わってくる率直なものだった。

 そもそも影響力のある芸能人はその人自身がメディアなので、ブログをやっていないケースが多い。「浜田がブログで発表した」なんて記事を読まずに済み、心底ほっとしている。