猪瀬前知事 一水会代表に360万円提供 強制捜査と同日

徳洲会グループから5000万円を受け取ったとして東京都知事を辞職した猪瀬直樹前知事の政治団体が昨年9月17日、前知事と徳洲会を仲介した新右翼「一水会」の木村三浩(みつひろ)代表に、活動費として360万円を提供していたことが20日、東京都選挙管理委員会が公表した政治資金収支報告書で分かった。東京地検特捜部は昨年9月17日、徳洲会の選挙違反事件の強制捜査に着手しており、同じ日に現金をやり取りしていたことになる。

「猪瀬直樹の会」(代表・猪瀬前知事、今年3月末解散)の2013年分の政治資金収支報告書には、支出目的は「活動諸々の費用」と記載されている。

 前知事の事務所は取材に「アラブ・イスラムの国や地域の大使館などとの関係修復の場を設定したり、ロシア外交に対する仲介サポートの活動費用として支払った」と説明した。前知事は提供の約5カ月前、米紙のインタビューで五輪招致のライバル都市であるイスタンブールに絡み「イスラム教国は互いにけんかしている」などと発言し、問題視されていた。また、都はモスクワと友好都市の提携をしている。

 さらに、現金授受が強制捜査と同日だったことについて、事務所は「(五輪東京開催が決定した)13年9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会を終え一区切りしたタイミング」などと文書で回答した。

 一方、木村氏も現金の趣旨について「5000万円とは別の話」としたうえで「イスラム諸国との関係改善や外国との交流促進」のための活動費(実費分)と文書で回答した。

 これまでの前知事らの説明では、12年12月下旬、徳洲会側から受領した5000万円のうち500万円を木村氏に貸与。13年9月25日、木村氏から返済を受けた。今回の360万円は、この500万円とは別に授受されたことになる。

 前知事は今年3月、徳洲会側から受領した5000万円を記載せず虚偽の選挙運動費用収支報告書を提出したなどとして公職選挙法違反(虚偽記載)で略式起訴され、罰金50万円の略式命令を受けた。